![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/78624651/rectangle_large_type_2_85ccdfd3f9c69871d017f6268ac7d5dd.jpeg?width=1200)
てぃくる 647 蓑
雨降りの時 着る蓑を
晴れていても 着ているんだ
雨でも晴れでも いつでも
世間の風が 冷たいからだ
蓑さえきっちり 着ていれば
中身が俺だと わからない
ああ そこにはただの
傷んだ蓑が あるだけさ
傷んでいるのは 蓑じゃない
本当は 中身の俺なんだ
でも傷んだ俺が 見えていると
無闇に励まされて 辛いんだ
ただの蓑は 何も言われない
だから俺は ただの蓑でいい
![](https://assets.st-note.com/img/1652621010477-HWqSprE5UG.jpg?width=1200)
クマシデの果穂。
果苞の根元に種子があり、本来は軸から外れてばらばらに飛び出すはずなんですが、種子が熟さなかったのかもしれません。
世の中には、生物、非生物を問わず、形を失って初めて機能するものがいろいろあります。第三者はばらばらに壊れた様を見て無残だと嘆くんですが……。実体を手放して初めて得られるものもあるんですよ。
たとえば。リンゴは、食べられることによって種子を散布します。食べられて形を失うことは、彼らが命を繋いでいく上で必須なんです。一方でガラスで作られたリンゴには、リンゴとしての意味がありません。それが変わらずに美しい姿を保ち続けても、です。
散ることのできなかった蓑を見上げながら、そんなことをつらつら考えています。
わたしはまだ身体を失ってはいませんが、失って機能するのか機能しなくなるのか、ちっともわかりません。
悲喜の色 日付を越せず失せにけり
(2020-02-25)