てぃくる 383 濡れ場
「あのー、監督」
「なんだ?」
「わたし……どうしても濡れ場を演じないとだめなんですか?」
「無名の新人女優に役を選ぶ余裕なんかないだろ?」
「それはそうですけど……」
「心配するな。君以外、すでに全員ずぶ濡れだ」
「あのー」
「なんだ」
「濡れてもカメラ……回るんですか?」
「それ以前に」
「ええ」
「濡れ手に粟と行きたいところだが、借金塗れですでにぬるぬるだ」
「じゃあみんなずぶ濡れなのは……」
「泣き濡れてる」
一人だけ濡れ場に抵抗しているように見えますが、腐朽が進めばちゃんと濡れるようになります。
(2018-01-09)