てぃくる 867 ひらひら
「ひらひらと生きたいな」
「いいね。軽やかで」
「でしょ? でもわたしがそう言ったら、みんなバカにするの」
「バカにする?」
「そう。軽佻浮薄だって」
「確かに、そう見えなくもないなあ」
「あんたまでっ!」
「足が地に着いてないから、そう言われるんだよ」
「むうう」
「俺らはちょうちょやとんぼじゃないんだから、現実から離れてひらひら生きることはできないさ」
「でもぉ」
「わかってる」
彼はポケットに突っ込んでいた右手を引き抜いて、寒風の中にひらっとかざした。
「いいんじゃない? それでも、ひらひらと行けば」
「へへ」
風に乗り風に逆らい六花舞う
(2022-01-05)