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てぃくる 723 こっそり叫ぶ

 時々、あれーと思うことがあるんです。
 本来一緒に居てはいけないはずの言葉同士の取り合わせ。
 でも、見かけるよなあと。例えば。

 静かな怒り。
 怒るには大きなエネルギーが要るわけで。それを「静かに」はそぐわないなあと。でも、使いますよね?

 小さなガッツポーズ。
 ガッツポーズは達成感や大きな喜びの発露。それを小さくしたらあかんでしょ。でも、使いますよね?

 ぶさかわいい。
 不細工とかわいいは、もともと対立概念です。でも、使いますよね?

 目で殺す。
 無理です。レーザービームが出るわけじゃないんですから。でも、使いますよね?

 軽くダメージを受ける。
 軽かったらそもそもダメージとは言いませんよ。でも、使いますよね?

 何度も反省の言葉を口にする。
 本当に反省してたら、一回で済みます。全然反省してへんやん。でも、使いますよね?

 こっそり叫ぶ。
 叫ぶのは、抑え切れない衝動のなせるわざ。こっそりなんて、本来ありえないんです。でも、使いますよね?

(ハナカタバミ)


 かように……意味を強めるためではなく、弱めたり曖昧にする意図で変なペアを組まされる言葉たち。
 わたしたちもまた、変なものとペアにされて丸められたりくすまされたりしてないか、省みる必要があるのかなーと思ったりします。


炙られて己が火と化す秋刀魚かな

(2020-10-01)

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