てぃくる 355 見かけによらない
全く同じもののイメージが、先入観で大きくぶれること。みなさんにも、経験があるんじゃないでしょうか。
例えば。とにかく愛想が悪くて、いつもぶすっとしているおっさんがいたとします。
「この人、嫌だなあ。きっと怒りっぽいとか、嫌味ったらしいとか、ろくなやつじゃないわよね」
まあ……多くの人がそういうイメージを持つでしょう。ところが。
あなたの乗っていた自転車のタイヤがパンクして立ち往生していた時、そのおじさんがちょっと待ってろと言ってわざわざ自宅まで工具を取りに行ってくれました。そして、まるで業者さんが修理するような鮮やかな手並みで直してくれました。
「ありがとうございます!」
お礼を言ったあなたに、はにかみながら「いきなりパンクはしんどいよな」と答えたおじさんを見て。あなたの抱いていた印象は、正反対に逆転しますよね。
人が外見から受ける直感的なイメージというのは、必ずしもあてにならないんです。
で、こいつです。チヂミザサ。
全身に棘を立てて近づく者を威嚇し、遠ざけているように見えますね。でも、それは見かけだけ。とげとげに見える毛の部分は、全く硬くないんです。やわやわ。
それだけじゃありません。種子を風で散らすものが多いイネ科植物の中にあって、チヂミザサは珍しく動物分布。毛の表面が粘ついていて、それが衣服に付くとぺたりとくっついてしまいます。いわゆるひっつき虫というやつですね。
近付くな、の正反対。ずっとあなたのお側にいたい……そういう粘着質のこいつ。一度くっつくと取り除くのが大変な厄介者です。
とげとげで愛想が悪い人はとっつきにくいですが、距離を調整するのは楽です。逆に何かとべたついてくる空気の読めない相手の方が、何かと大変なのかもしれません。
(2017-11-05)