てぃくる 331 恋の炎
湧き上がる想いがそのまま炎と化し、この身を灼き尽くしてしまえばいいのに。人魚姫は嘆いた。
身を捨てれば、想いしか残らない。諦めれば、想いすら残せない。
ああ、わたしはどうしたらよいのだろう?
人魚姫の嘆きをじっと聞き続けていたオババは、手にしていた杖で床をこつこつと突いた。
「そうだねえ。おまえの想いを炎に変えることはたやすいよ。でも、それじゃあ、焼き人魚が一匹出来るだけだ。しかも、下半分しか売り物にならん」
☆ ☆
恋は盲目。周囲が見えなくなることは珍しくありません。
付け込む隙がこれでもかとできるので、それに乗じておぜぜを巻き上げようという輩と商売がわんさかお出ましになります。
好きがいっぱい……はいいんですが、隙がいっぱいにはどうかご用心くださいまし。
(2017-08-18)
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