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てぃくる 1015 加害者と被害者

「傷をつけてるんだか、傷がついてるんだか、わからんな」

(ナラガシワの葉群)


 切った鋸なら加害者で、切られた木材なら被害者
 明るいやつは加害者で、暗いやつが被害者
 上にいる連中が加害者で、下敷きになってるのが被害者
 エッジが立ったやつが加害者で、エッジの丸いやつは被害者
 無傷なやつが加害者で、虫に食われたやつは被害者
 鮮明なやつが加害者で、ぼけてるやつが被害者
 ………………

「だんだん理屈がわからなくなってきたが」
「実際のところ、加害と被害の間にはそれくらいの差しかないということだよ」
「ふうん。じゃあ俺が加害者で、あんたが被害者ってことでいいんだな?」
「その逆もまた真なりだ」

 ぶちっ!

◇ ◇ ◇

 加害者になるのは本来恥ずべきことだが、なぜか加害者は誇らしげだ。
 被害者になるのは、誇らしくはないにしても恥ずべきことではない。

 そんな有様だから、加害者がのうのうと被害者面をするのだ。
 この恥知らずめ!


梅雨寒や防犯看板濡れそぼる

(2023-05-28)

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