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てぃくる 769 無駄

(ナナミノキの果実)


「ねえ、なんでこんなに無駄が多いわけ?」
「ビューティークイーンは一人でいいってことじゃない?」
「残りは全部無駄なの?」
「一番美しい者が魔物に食われるんだから、無駄かどうかとは別次元よ」


「でもさあ。食われなかった者はみんな捨てられるんだよね」
「解放されると言って」
「実質放置プレイじゃん」
「ここはお布団があるだけましよ」


「無駄じゃないとしたら、わたしたちは何の役に立つの?」
「そりゃあ、ごにょごにょごにょ……」
「はっきり言いなさいよ!」
「腐ってから役に立つ」


「なにそれえっ!」
「しょうがないじゃん。それが無駄にならないってことなんだからさ」
「腐っちゃったら、わたしたちは意味ないじゃん!」
「大丈夫。自我が真っ先に腐るから」

☆ ☆

 鳥にとってあまりおいしくないのか、粗末に扱われたナナミノキの果実が地面にたくさん落ちています。確かに無駄玉は多いんです。でも無駄を省くより数でチャンスを得る方が、たくさん子孫を残せるんでしょう。

 地に落ちた果実は、ほとんどが種子ごと腐ってしまいます。でも、果肉や種子に含まれていた養分は腐ることによってリリースされ、最終的に再利用されるわけですから、決して無駄にはなりません。


紅梅の散りてなほ咲く水のうへ

(2021-03-10)

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