![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/78219044/rectangle_large_type_2_877b3514aa7859edc010dc247c372f51.jpeg?width=1200)
てぃくる 539 さんざしの詩
「ああ、ほら。あそこに山査子の花が咲いてる」
「どこ? どこですか?」
「あの大きな楡の木の下だよ」
「あら……地味なんですね」
「ここから見ればね」
「近くで見るときれいなんですか?」
「きれいだと思うが、そう感じるかどうかは人それぞれだろうなあ」
「それぞれ、ですか」
「そう。桜のように山盛り咲くわけではなく、花水木のような華やかさもない。低い木の葉陰でひっそり咲く花だ。華がないと言われても仕方がないからね」
「へえー」
「果実だってそうさ。赤く実るが、それがとても美しいかと言われると微妙だろう」
「特徴がないということですね」
「そう。白い花の咲く低木で、赤い実が生る。そういう記述の中にすっぽりと収まってしまう」
「それでもお好きなんでしょう?」
「好きだよ。私にとっては山査子というだけでいい。好きな理由としてはそれで十分なんだ」
![](https://assets.st-note.com/img/1652110921329-zM9peISwDX.jpg?width=1200)
どうして人を好きになるのか
理由なんか考えたことない
好きになった人の讃え方は
いっぱい考えるけどね
(2019-05-13)