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てぃくる 539 さんざしの詩

「ああ、ほら。あそこに山査子さんざしの花が咲いてる」
「どこ? どこですか?」

「あの大きなにれの木の下だよ」
「あら……地味なんですね」

「ここから見ればね」
「近くで見るときれいなんですか?」

「きれいだと思うが、そう感じるかどうかは人それぞれだろうなあ」
「それぞれ、ですか」

「そう。桜のように山盛り咲くわけではなく、花水木のような華やかさもない。低い木の葉陰でひっそり咲く花だ。華がないと言われても仕方がないからね」
「へえー」

「果実だってそうさ。赤く実るが、それがとても美しいかと言われると微妙だろう」
「特徴がないということですね」

「そう。白い花の咲く低木で、赤い実が生る。そういう記述の中にすっぽりと収まってしまう」
「それでもお好きなんでしょう?」

「好きだよ。私にとっては山査子というだけでいい。好きな理由としてはそれで十分なんだ」


 どうして人を好きになるのか
  理由なんか考えたことない
   好きになった人の讃え方は
    いっぱい考えるけどね

(2019-05-13)

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