てぃくる 934 白い山
白い山が 緩やかに崩れてゆく
初めは白くなかった
白い山だとわかった頃にはもう衰え始めていて
そのうち山ですらなくなった
毎年思うのだ
その白い山は
どこから来てどこへ行くのだろうと
だが
気づいた時にはいつも山が崩れ始めていて
白を失いつつあるのだ
◇ ◇ ◇
地味で小さくても、どっさり咲く花は目につきます。そこに「在る」ということはいやでもわかるんです。でも、それが何か、どんな花かはいつも見過ごされます。
もっとも、そのような小さな花を見過ごさない虫たちはいっぱいいるんですよね。彼らは山のように咲く白い花を「山」だとは決してみなさないでしょう。それは、どんなに小さくて地味でも命をつなぐための大事な花なんです。
今年も山のように咲き上がっていつの間にか消えた花の跡を見上げ、私たちは何のために何を見ているんだろうなと……ふと思ったのでした。
膨れ上がる欲望弾け百日紅
(2022-08-07)