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てぃくる 398 江戸彼岸

 今年も、職場構内の江戸彼岸が満開になっています。


 日本の桜を代表する品種である染井吉野。各地に植栽される桜の代表格ですね。花色、花の大きさ、咲きっぷり。桜と言えば品種を特定しなくても染井吉野を指すくらい、日本ではポピュラーになりました。
 でも、それが雑種であることは意外に知られていません。推定されている交配親は、主に大島桜と江戸彼岸。花の大きさを大島桜に、花色や咲き姿を江戸彼岸にもらったということになるんでしょう。開花期は、両種の間くらいになります。

 実は、わたしは染井吉野よりも親の江戸彼岸の方が好きなんです。花色は染井吉野と同系ですがやや淡く、花も小ぶりなので、華やかさという点では染井吉野に敵いません。でも、江戸彼岸はどっしりした大木になる上に、とても長命なんですよ。よわい千年を越すと言われている、名のついた老木が各地に存在します。病害に弱い染井吉野とはだいぶ違いますね。
 四方にのびのび枝を広げ、その枝いっぱいに花を乗せた姿は、どこか窮屈そうな染井吉野と違って、とても野趣に溢れています。

 春を先取りして、真っ先にその恵みを寿ぐ。ほんの少し紅を差した花弁は、かじかみながらもその寒さに負けずに生命力を誇るたくましさを感じさせます。

 与えられた生の期間は有限なんだよ。その生を無駄にしないで、ちゃんと燃やしているかい?
 時折ひらひら舞い降りてくる江戸彼岸の問いかけを浴びながら。満開の桜花を見上げます。


賑わいも酒食もなくも桜咲く

(2018-03-31)

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