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てぃくる 274 色のない菊

僕に色は要らない
 色があろうがなかろうが
 僕は菊だ

 色鮮やかな菊が欲しければ
 他をあたってくれ
 僕には色がないから

 僕に色は要らない

 もし色があったら
 僕は他の菊といっしょくたにされるだろう
 たくさんある菊の一つになってしまうだろう

 そんなのはまっぴらだ

 僕は色のない菊
 僕だけが菊で
 僕だけの菊だ


 クズヒトヨタケ
 堆肥や木屑から発生する小さなキノコです。非常に寿命が短く、まさに一夜で黒変して萎れてしまいます。

 うんと小さいこと。鮮やかな色がないこと。脆く壊れやすいこと。とても儚いこと。どれも、わたしたちの意識の中ではあまりいい位置に置かれません。しかし全ての特性には、彼らが生命を繋いでいく上での意味がちゃんとあります。意味があるからこそ、彼らはずっと今まで生き延びてきたんですから。

 役に立つこと。役に立たないこと。それを、外から押し付けられた物差しで決められるのはまっぴらです。

 一億総活躍ですか。なんだかなあと思います。人口減少による労働力不足を補おうとして徒らに効率化を追い求め、稼働率を上げようとする社会。もっともっとがんばれと闇雲に尻を叩こうとする社会。
 それで絞り出されたものは、一体どこに辿り着くのでしょう? わたしたちが自らを削って注ぎ込む先は……何なのでしょう?

 がんばれない人がいる限り、がんばらないことにもちゃんと意味があるはずなんですけどね。
 ええ。わたしはがんばりませんよ。色は要りません。それがどんな色でもね。わたしは……色のない菊。それでいいんです。

(2016-12-04)

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