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てぃくる 626 立て板に水
立て板に水のように話す。淀みなくすらすらと話すことですね。ポジティブな表現に見えますが、本当にそうかな。
ここを強調して、ここはさらっと。ここはうまく言えへんかもしれないなあ。まあ、噛んだらその時はその時や。そんな風に、何かを話そうとする時には必ず起伏があるわけで。立て板に水でだあっと話されると、逆に印象に残らないものです。
うまくしゃべれずに噛み噛みになってしまうのは、ナマなんですよ。どう言おうかなという意図がちゃんと見えるんです。でも立て板に水じゃあ、機械発声と変わりません。いわゆるセールストークの失敗って、意外にそういうところにあるように思えるんです。
あえて立て板に溝を掘ったり、堤防を盛ったり。あっさりすんなり水を流さないからこそ表現できることもあるんじゃないかな、と。
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でも。
立て板に生コンとか。
立て板にやまと糊とか。
立て板にスライムとか。
水以外のものを流すのは……ちょっと。
最初から流れへんがな。
積もる雪 立て板さへも黙らせる
(2020-01-10)