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てぃくる 36 黄色いハンカチ

「ねえ、黄色じゃなきゃいけないわけ?」
「なんの話?」

「いや幸福の黄色いハンカチって……」
「まあ、絵空事よ。実際のところ、黄色いハンカチってほんとに使いにくいと思うわ」

「だよねー。野暮ったいしぃ、汗染みたとこ分かりにくいしぃ、でも色染みは目立っちゃうしぃ」
「そー。でもさあ」

「うん?」
「何色だって、それで幸せになれるんなら持っちゃうかもー」

「あんた、金運かもーん言うて、どぎつい黄色の長財布使ってるもんね」
「そー」

「それとハンカチとどう違うわけー?」
「えーん……」

☆ ☆

 まあ、そんなもんです。

 黄色は、訪花昆虫に強くアピールする色だと言われています。花弁は他の色でも、花粉や葯が黄色い花はいっぱいあります。赤やオレンジ色に比べて地味な印象のある黄色ですが、昆虫にはとても魅力的なのでしょう。特に蜂に人気があります。
 そう言えば、気温が低くて虫の活動がまだ鈍い春先に咲く花には黄色いものが多いですよね。タンポポしかり、キンポウゲ類しかり。

 黄色以外の色にもそれぞれ効能があるようです。たとえば赤。緑の補色であり、こんもりと茂った枝葉に紛れていても目立ちます。密林に生える植物の花には、赤系のものが多いですね。
 光の乏しい夜でも花が目立ちやすい白。夜咲く花には、白いものが多いですね。
 青や紫は、目立たせるという意味ではあまりメリットがないように思えるんですが、その色の花が少なからずあるということは何かしら利得があるのでしょう。色の見え方は生物によって異なりますし。

 おっと、黄色に戻りましょう。

 黄色いハンカチをひらひらさせて、ヒメツキミソウがお客さんの来訪をじっと待っています。

 色に惹かれて寄ってきたのが何の役にも立たないおっさんだったなんて、残念無念! ……そう思っているかもしれません。いえ、わたしは幸せな気分になれましたけどね。

(2013-07-11)

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