てぃくる 278 黒い波
寄せては返す黒い波
それが白でも青でもないことに
理解も納得も出来ないけど
でも
波は間違いなく黒いんだ
「人生には、いろんな波があるってことさ」
「越さなければならない波かい?」
「いや、どこに居ても俺らは波をかぶるよ」
「……」
「そして、俺らに波の色は選べない。波が俺ら一々区別しないのと同じさ」
「ああ」
「俺らがそれをいいなと思うか、嫌だなと思うか。それだけだよ。しょせん感想でしかない」
「黒い波……か」
「波から見れば、俺らが黒いのかも知れないぜ」
「……」
「そして、波は俺らの色を変えることは出来ない。波の色がどんなに黒くてもね」
☆ ☆
カワラタケ。ものすごーくポピュラーなサルノコシカケの仲間です。
このキノコからはクレスチンという抗がん剤が抽出され、広く使われていましたが、現在では単独使用での抗がん作用はほとんどないことが明らかになっています。
しかし服用による副作用が極めて小さく、薬剤を経口摂取できることから、現在でも他剤の効果を高めるための補助剤として使われています。
黒い波。
彼らは、人間の医療の役に立つため波音を立てているわけではありません。ただひたすらに、木を腐らせているだけなんです。
ヒトが現れる前から。
そして、おそらくはヒトが絶滅してもなお。
(2016-12-13)