あさがや今昔物語【5】「お伊勢の森」

★この記事は、フリーペーパー「浪漫社通信」のために書いた記事をネットで読み直せるように載せたものです。

【あさがや今昔物語】【5】
「お伊勢の森」

阿佐ヶ谷駅の北側にある神明宮は以前は「天祖神社」という名前でした。
(私も含め、昔から住んでる人は今でも「天祖神社」と言ってしまうこと、ありますよね!笑)
この天祖神社は私が子どもの頃から頻繁に訪れお参りしたり遊んだり、駅まで歩く時は必ず神社横の道を通り、毎年のお祭りも楽しみにしていた生活に密着した神社です。
それだけでなく、かつて私の実家が建っていた土地は天祖神社の所有地だったそうで、神社からの借地に建った家に住んでいたのです。当時その話を知った時に、天祖神社は駅の近くにあるのにこの辺(阿佐谷北5丁目38番地)が何で天祖神社の土地なの?と疑問に思いました。うちだけでなくかなり広範囲に渡って天祖神社の土地だったようで、神社から土地を買い取る人もいました。私の実家も土地を買い取ることを勧められましたが結局買い取らずに住み続けました。まだバブル期のはるか前のことです。もしもあの時代に行けるなら、悪いことは言わないから今のうちに買っておけと全身全霊で祖父と父を説得したいです。(笑)

その実家から歩いて3分くらいで行ける早稲田通りにある、家から一番近いバス停の名前が「お伊勢の森」でした。何の疑問も持たず利用していたこのバス停の名前、実は由緒ある名前だと知ったのは恥ずかしながら最近のことです。

去年の秋に、長年お世話になったうえにこの地で店までやらせてもらって、たまには感謝の気持ちを伝えなければと思い立って一人で神明宮に行ったのです。そこで神社入り口にあるプレートに書かれた説明を読んで驚きました。
もともと神明宮は今の場所ではなく、阿佐谷北5丁目に最初にあったとのこと。現在の場所に移転したのは江戸時代中期らしいです。
戦前の地図では北5丁目付近は「御伊勢の森」と表記され、現在の杉森中学校やその周辺の住宅地は森だったようです。その住宅地の中に現在も「お伊勢の森児童遊園」という小さな公園があるのですが、ここがこの阿佐ヶ谷の地に天照大神が最初に祀られた場所で、実家から徒歩1分足らずの距離の私が散々遊んだ公園だったのです。あの公園がこの土地にとってそんなに重要な場所だったとは!
実家周辺が天祖神社の土地だったこともこれで理由が理解できました。なるほど…あの辺一帯が「お伊勢の森」だったのですね…。

まだ杉森中学もなく住宅地にもなっていなかった当時、静かな深い森が広がっていたと思うとお伊勢の森児童遊園の存在がとても神聖なものに思えます。一部分でも当時の歴史を感じられる場所を残してくれてありがたいです。
この「お伊勢の森児童遊園」は、雑木林の木々を自然な状態で残してあり、住宅地にありながら森にいる気分を味わえる素敵な公園なので、駅からは少し遠いですがご興味のある方はぜひ散策に行ってみてください。

◎神明宮(阿佐谷北1-25-5)
◎お伊勢の森児童遊園(阿佐谷北5-27-16) Google Mapでは児童公園となっていますが「お伊勢の森児童遊園」が正しい名前です。

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