あさがや今昔物語【4】「阿佐ヶ谷の宝 好味屋」

★この記事は、フリーペーパー「浪漫社通信」のために書いた記事をネットで読み直せるように載せたものです。

【あさがや今昔物語】【4】
「阿佐ヶ谷の宝 好味屋」

今回は、連載第二回でダイヤ街の二階に昔あった店舗について少し触れた「好味屋」(こうみや)について書きます!
これはもう本当に個人的に好きだったお店の話なので、あまり面白い話ではないかと思いますが、どうかお付き合いください。

好味屋は私が物心ついた頃には阿佐ヶ谷周辺に何店舗かあり、地元の人達の生活に密着した気軽に利用できるパンとケーキのお店でした。
我が家では、普段気軽に買える「まちのケーキ屋さん」として好味屋を利用して、何か特別な日のお祝い等には西荻窪の「こけし屋」を利用していました(好味屋、ごめん……)。

ダイヤ街二階にあった好味屋のソフトクリームコーナーは、隣の卓球コーナー、ゲームコーナーで遊ぶ時のお楽しみでした♪好味屋のソフトクリームの「モカ」が好きで、バニラとコーヒー味の両方を味わえて、乳脂肪分が少なめのソフトクリームがかえってさっぱりしていて美味しかったのです。あのコーヒー風味が他にはない美味しさで、ただのバニラのソフトクリームは決して食べず、モカ一筋でした。

阿佐ヶ谷住民のホームセンター的存在の「カナモノワタナベ」さんの目の前、現在「博多ラーメン長浜や」になっている所も好味屋でした。ここは旧中杉通りにあって駅からも近いので、ここを利用していた方が多いのでは?
好味屋のケーキはおしゃれではないですがシンプルで素朴で、価格もお手頃でした。なので祖母が買い物のついでに買ってきてくれたりして、嬉しかったものです。
普通のショートケーキやチョコレートケーキももちろん好きでしたが、好味屋と言えば何と言っても「インディアンプリン」です!
「プリン」と言っても、ケーキを作った時に出るスポンジケーキの切り落としに洋酒を染み込ませて作ったいわゆる「プディング」というものだと思います。スポンジの端っこの茶色と生地の色の美しいマーブル模様に生クリームがちょこんとのっていました。これが好味屋の名物ケーキで、当時は作るケーキの量も多く切り落としが大量に出たようで、毎日店頭に並んでいました。他にも細かく刻んだアーモンドが外側にびっしりついたコーヒー味のクリームのロールケーキは今でもよく覚えています。

早稲田通り沿いにあった北5丁目の店舗は私の自宅からいちばん近く、よくパンを買ったりスポンジの切り落としの袋詰めを買いました。切り落としの袋詰めは、時々生クリームがついてる部分があると、当たりでした♪好味屋の他にもこの付近には灯油を買っていた燃料屋さん、よく雑誌や文房具を買っていた薬屋兼雑貨屋さん、酒屋さんなど暮らしに密着した個人商店があって便利でした。コンビニなどない時代に地域の生活を支えていてくれたお店たちです。

そして早稲田通りを渡って北6丁目に行くと好味屋の本店と思われる店があったのですが、そこは庭が雑木林で、木の切り株を椅子にしてあって(たぶん切り株だったと思います)屋外にある席でケーキが食べられたのです。今思うとなんてゆったりしているのでしょう…。
他にも浪漫社のすぐ近くの高架下を通った目の前の乾き物のお店も昔は好味屋で、そこは看板だけまだ残っています。

現在はそれらの店舗はすべてなくなり、成田東にある好味屋フーズ成田東店だけが唯一当時の好味屋のパンとケーキの味を残しています。インディアンプリンは予約制となっており三ヶ月ほど待つそうで、昔と違って切り落としの量が少ないので、作れる量に限りがあるようです。この店舗が残れたのは、区内の学校の給食のパンを卸しているからだそうです。給食で好味屋のパンが食べられるとは羨ましい…。

荻窪のタウンセブン一階には「ニューコーミヤ」という店があり、ソフトクリームを食べることができます。モカももちろんありますが、昔と比べるとこってりした味になった気がします。昔の味を知る者としてはあのソフトクリームは別物ですが、今は濃厚な味の方が受けるのでしょう。
今では阿佐ヶ谷にもおしゃれなパン屋さんがいくつもありますが、当時の好味屋は阿佐ヶ谷を代表する質の高いパン屋、ケーキ屋だったと思います。

今回この文章を書くにあたって、ネットで詳しく調べたりせずに当時の記憶だけを頼りに書きました。もしも多少間違ったことを書いてしまったとしても、自分の心の中の思い出を大切にしたかったから。
無駄に長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。ぜひお店でお客様と好味屋について語り合えたらと思います。

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