T50RPmk4とか、幾つかのヘッドホンの話

SNSではカミングアウト済みだが、数ヶ月前にAustrian AudioのThe Composerを購入してしまっていた。「記事にすると意外と読んでもらえる」「書き残しておくと後々便利」ということが分かってきたので、今必死こいてそっちのレビューを執筆中だが、それはそうと数日前にFostexのヘッドホンを買ってしまったのでそれについて簡単に書く。

そもそも平面駆動型のヘッドホンが好きで、ちょっと前まではAudezeのLCD-Xをメインのヘッドホン機として使っていた。結局メイン機の座には前述の通り高級ダイナミック型ヘッドホンであるThe Composerが座っているわけだが、唯一無二の解像度と鳴り方をもたらす平面駆動型ヘッドホンのことが忘れられず、サブ機として10万以内くらいのヘッドホンを持っておこうと思い、秋葉原の某音響機器店で複数機器を視聴した。というかこの段階で色々な思惑からFostexのT50RPを導入しようということは十中八九決まっていたのだが、万一のことを考えて店舗に向かうのだった。これが悲劇の始まりだった

まずは、記憶に残ったヘッドホンを幾つか記しておく。

Audeze MM-100
平面駆動。ミキシングに適した「MM」ラインの下位機種であり、Audezeでは久々の10万を切るラインのヘッドホン。本国価格$399のところ、発売当初は円安などの影響で9万円台のなんとも言えないヘッドホンだったが、現状では7万円台にまで価格が落ち着いてきた。ぶっちゃけこれで良いのではと思ってしまう。ややハイ上がりの音色傾向だが空間表現が広く、そこに平面駆動ならではの解像度の高さが加わり、表向きの音楽の楽しさと裏向きの楽しさ(録音された楽器の裏にあるノイズや、そこに施された処理をかぎとるような聞き方)が両立して楽しめる。低音は平面駆動ならではというか、「モウッ」とした鳴り方をせずどこまでも実直なため量を感じ取るのは難しいが、見やすさという面では特に問題はないと思う。また、上位機である「MM-500」との比較も以前行ったことがあるのだが、確かに100の方が情報量が減少するし、空気感でも一歩劣るところがある。しかしこっちは7万円、あっちは29万円だ。芳醇な空気感を出してくれるヘッドホンを別で探して使い分けるほうがお得といえばお得と言える。大変おすすめ。

Hifiman SUNDARA
平面駆動。先日Amazonセールで1万円台になっていたのを買い逃した悔しさから購入はしなかったが、試聴はしてみた。MM-100からきらびやかさをさらに削ったような鳴り方だが、一定の評価を得ているHifimanだけあって欠点という欠点はほぼ見当たらない。ぶっちゃけこれで良いのでは2(ツー)。注意すべき点は、つけ心地は最高とは言えないのと、前述の通りHifimanがよくセールをするので適切な購入タイミングを狙う必要があるというところ。

TAGO STUDIO T3-01
非平面駆動。Fostex導入の裏には「日本の現時点の技術を確かめたい」があり、そういう意味ではこっちのT3-01でも良かったのだが、T50RPmk4との価格差を鑑みて見送りとなった。国産ヘッドホンでいうところの「制作向け」というと特定の周波数が嫌に強調されていたり、あえて聴きづらくチューニングされているようにウザさが感じられる時もあるのだが、この機種はその素振りも感じさせず、あくまでもフラット調に音楽を鳴らしてくれる。木目のハウジングやふかふかのイヤーパッドなど、所有して使う喜びを刺激してくれるのもポイントで、人気たる所以を存分に感じされてくれる。制作用ヘッドホンを探している、国産応援マインドがある人におすすめ。

Ultrasone Signature Fusion
かなり昔にUltrasoneのヘッドホンを所持していたことがあったのと、そういえば一昔前の高級ヘッドホンの代名詞といえばSignatureだったなあ、みたいなことを思ったり思わなかったりしながら試聴。が、なんとも微妙。Ultrasone製のヘッドホンには電磁波を低減するための技術が組み込まれているのだが、それがなんとも言えない悪さをしているんじゃないかと思うピーキーさで、1万円以下のヘッドホンやイヤホンをあさりまくっていた時のような懐かしさを感じた…。とはいえちょっとくらい尖った周波数特性って実は慣れればどうとも思わなくなるもので、じゃじゃ馬として乗りこなした先の世界もちょっと見てみたかったなと思った(というか周波数的な特殊さで言えばT50RPも……)。

……そんなこんなでT50RPmk4の試聴の感想に移る。まずは店頭で聞いた感じの印象。

・解像度感はさすがの平面駆動というか、独特の細やかさが感じられるが、MM-100などのUS的なヘッドホンと比べるとハイが畳み込まれている印象で、開放感はそれほど無い。閉塞感があり、ゴチャついて聞こえる。
・ボーカルのざらつきがうるさく感じられるように出来ているように聞こえる。ミキシングという観点ではこの箇所を抑制するようになるので良いのだと思う。
・一方で一定の環境だと耳に突き刺さりまくる「SULPHUR」は聴いてもなんの違和感もなし。Eliminateとかのベースミュージック/EDMも聴いてみた楽しく聞けるので、こういう音楽の制作用途にも向いているかもしれない。
・低音は謎の増幅感がある。というか試聴機の右チャンネルに一定以上の低音を入れるとビビリが発生するようになっていて嫌だった(ここ重要)

ぶっちゃけ、低音のビビリを感じた時点で退いておけばよかったのだが……国産応援の意味も込めて購入。

・帰宅後、ちょっと大きめ(聴いてて気持ちいい)くらいのレベルでダブステップを鳴らしたら左ドライバに違和感。上記と同じような、少し負荷をかけただけでビビりが発生する問題が今度は左チャンネルに……
・いきなり大きめの音量で低音を鳴らしてしまった自分が悪かったかもと思いつつ、時間を置いても治らず……
・……現時点でも治っていない。これは初期不良に含まれますか?

思うに、低音の量感(質ではなく)との共存は平面駆動型の課題の一つであるようだ。以前、FinalのD8000を試聴した時も似たような問題があった(低音をある程度の圧で鳴らすと、ハウジング内のペーパーがパタパタ動く音が聴こえた)し、Audezeやその他の平面駆動型は「量を強調しない」ことで物理的な問題を回避していたように思える。T50RPmk4は、量で言えばダイナミック型にも追随するくらいに低音が鳴っていて、見えやすさという意味では他の平面駆動よりも優位だったが、その分、ギリギリのバランスで設計されていたのでは?と思ってしまう。または、設計以降の段階で音圧の高いベースサウンドを鳴らすことがそもそも意図されていなかったのかもしれない。

……というわけで、本機、残念ながらおすすめ出来ず、です。初期不良として返すか悩みつつ、解像度や独特の周波数特性にはある程度の可能性が感じられたので、持っておいてもいいかもな〜。

おまけ

各価格帯、俺が思うおすすめヘッドホン(時折イヤホン)
(用途→リスニング:制作半々、傾向としてはモニター寄り)

〜1万円
わからん、中華イヤホン系でフラット系の評判いいやつ
7HZ x CrinacleのZero2とか

1〜3万円
MDR-7506…定番オブ定番 みんな使ってる 1万円台
ATH-M50x…元気系モニター みんな使ってる2 2万円くらい
HPH-MT8…あんまりわからんけど良いらしい 2万半ばくらい
S12Pro…Letshuoer(中華ブランド)の平面駆動イヤホン 人工的な音色だけど高解像度でフラットめ ポータブル向け 2万半ばくらい

3〜5万円
K712PRO…ハイ上がり綺麗系 低音は出ない 3万円台
SUNDARA…平面駆動最コスパ 全面フラット 3万円台(セールでもっと安くなる)
MDR-M1ST…多分いい、だってみんな言ってるし 3万円台
DT700PROX…くっきりはっきり元気系 4万弱くらい
ATH-R70x…自然オブ自然 駆動力必須 4万ちょいくらい

5〜7万
HD490PRO…良いと思うよ 5万円台
Hi-65X…自然で力強い 5万円台
MDR-MV1…イマーシブ対応 低音くっきり&ベストつけ心地 6万弱
T3-01…上記レビューの通り 木目が意外といい 6万円台
DT1990PRO…クリティカルな周波数特性に解像度も加わり敵なし 6〜7万?

7〜10万
MM-100…上記レビューの通り 大変いい 7万円台
S5X…こちらもイマーシブ向け 周りの人がおすすめしてた 7〜8万円台
HD660S2…間違いない ローが出て現代風 8〜9万円台
NDH30…以前視聴したときふっとんだ 優等生 9〜10万円台

〜20万円
LCD-X…今思えば良い機材だった 18万くらい
Clear MG Pro…低インピーダンス出力のアンプでフラットに 高抵抗ではクラブ鳴りに 今まで聞いてきた中で一番スピーカー鳴りに近い 20万前後だがセールで価格変わりまくるからわからん

20万以上〜
どれでもいいや〜と思いきやクセ強機種が実は多い ここからは絶対に視聴することになるので適当です
MM-500…音がすべて見える スピーカーいらなくなる(スピーカーみたいな鳴り方ではない) 30万弱
Heddphone Two…冷静にすべての音を描く 小型化でつけ心地も◯ 30万弱
The Composer…最強のスピード感で空気感やノイズをすべて描ききる 棲み分けが良すぎて逆にスッキリ聞こえる 未知の領域 40万くらい
D8000(D8000Pro)…荒々しさと静謐さを兼ね備える平面駆動機 圧倒的解像度 50万弱

以上やで

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?