絵本担当と出版社③
帯との戦い
何気なく書店に立ち寄った時、
「〇〇大賞受賞作品」
「〇〇氏激賞」
「映画化作品原作」
などなど、有名人の写真やコメント、編集者の推し文句が書かれた細長い紙が表紙に巻かれた本を見かける事があるとおもいます。
書店では、あの細長い紙を『帯』とよんでいます。
出版社がわざわざ書籍に帯を巻くのは、書店でお客様の目を引くからなのですが、
冒頭に挙げた帯文の例以外にも
●新刊発売時で目立たせたい。
●書籍がメディア化されるタイミングだ。
●今snsでバズっている。
●近々新聞掲載される、又はされた。
などなど、色々なタイミングで帯は巻かれており、そのバリエーションも多様です。
中には
●単にその書籍の内容を要約しただけ
という帯も最近ありがちで、そこまでして帯を巻くと売上が違うのか…と思わされます。
前置きが長くなりましたが、
今回、トピックにしたいのは
●プレゼント等のキャンペーン企画の告知帯です。
題名の“戦い”とは、少々大袈裟ですが、書店の担当が、この類の帯に振り回されている現実をこの言葉に託してみました。
コミックや児童書(児童文庫や読み物など)、絵本でもあるのですが、春休みや夏休みのなどのタイミングを狙って出版社はプレゼントキャンペーンをやりがちです。
各社が出している様々な児童向け書籍のシリーズで、
(サバイバルシリーズ、どっちが強い、銭天堂、つばさ文庫等)
【帯の一部を切り取って送ると素敵なプレゼントが貰えるよ!】
というキャンペーンをよくやります。
最近では、帯の画像とレシートを一緒に送信するとプレゼントを貰えるというキャンペーンをやった出版社もありました。
キャンペーンがあると、子どもたちも喜ぶし、売場も盛り上がるのでありがたいです。
ただし…あたり前のことながら、キャンペーンには必ず終了日時があります。
そして、ほとんどの帯にはその日時が記されています。
つまり、書店的には
<終了期日が過ぎたキャンペーン帯を書籍から外す>という作業が必ず発生します。
帯を付けたまま返品する場合もありますが、キャンペーン後もそのまま平積や差しで置いておきたい本の場合は、必ず帯外しの作業が必要です。
でないと、お客様達に間違った情報を伝えてしまうからです。
キャンペーンの書籍なので、冊数もかなりあります。また、今はコロナの関係で本にシュリンク(ビニール)を掛けているので、
①入荷時に掛けたシュリンクを外し、
②キャンペーン帯を取り、
③またシュリンクを掛け直す
という作業を一冊ずつひたすら行います。
私が勤めている書店は、児童文庫や絵本、読み物もほぼ全てにシュリンクを掛けるので、
その手間は膨大です。
中には、帯は書店で巻くように!とばかりに、発注数と同数の帯を送ってくるツワモノな出版社もあります。(大手にありがち)
私が勤務する店は割と律儀に言われた通り巻きますが、手が足りない書店だと、無視している所もあるのではないかなと思うほど、これは手間と時間がかかる作業です。
最近では、今とても売れている児童書で、
「8月だけ急遽キャンペーンをやる事になったから」と、8月に入ってから帯だけを営業の方が持ってきた出版社もありました。
たった1ヶ月のキャンペーンの為に、この夏休みの忙しい時期に300冊近くの帯を巻き直す…。
さすがに、この暴挙には書店員の人達からかなりのクレームがあったらしく、すぐに帯の巻きなおしはしなくてよいと言われたのですが、代わりに営業の人に提案されたのが、
「表紙が見えなくなってもいいから、シュリンクの中に帯を挟み込んでほしい」……。
キャンペーンに帯が必要なのはわかります。
そんなに大切な帯なら、もっとしっかり計画立てて、出版社で巻いて出荷してほしい
とこの時はさすがに思いました。
また最近、老舗の児童書の出版社が
昔からよく売れている赤ちゃん絵本の帯に
各書店の児童書担当のメッセージをいれ、
各店でその帯を巻いて販売する
という変化球の帯キャンペーンを行いました。
自分の言葉が書かれた帯なら、簡単に返品しないだろうという魂胆もあるのかもしれません。
この出版社からも、その帯だけ送られてきましたが、私は面倒なので巻き直しませんでした。その時間に他の作業をやりたいし、お客様に果たしてメリットあるのかなというのも疑問なキャンペーンでした。
今年もやるようですが…。
以前、帯の一部を切り取って送るというキャンペーンで、その帯に、キャンペーンで必要な切り取り部分を印刷し忘れた出版社もありました。
この場合も、正しい帯を送るので巻き直してくださいと言われたっけ…。
そして、一番ガックリするのは、取次から1年前のキャンペーンの帯が付いたままの本が入荷する時。出荷する時気付けよ…とつい文句の一つも言いたくなります。
こんな具合に、帯にまつわるアレコレは本当に色々あります。
一方、最近良く考えられているなと思ったのは、告知を帯ではなくシールにしたキャンペーンです。
シールならば簡単につけ外しが可能なので、キャンペーンの期間中はシュリンクの上からでも貼っておくことができます。
また、キャンペーンが終了したら売場ですぐに剥がす事が出来ます。剥がす手間は確かにありますが…でも帯の巻き直しよりはよっぽどマシです。
色々愚痴めいた事を書いてしまいました。
帯巻きや、帯外し、書店の仕事のうちの一つなのは長年書店で勤務してきて理解しています。
しかし、帯にまつわる販売戦略に関しては、出版社側にも書店の手を煩わさない工夫の余地はまだまだあるのではないかと思います。
出版社にはもう少し書店業務の効率を考えてもらいたいなぁと、一書店員として願っています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?