絵本担当と出版社⑨
SNS
私が勤務するチェーン書店の本部は、
「各店のSNSでの情報発信禁止」
というナゾルールを徹底していたのですが、最近「決められたルール内でSNSを積極的に活用するように」と方針が変更されました。
珍しく賢明な判断です。
本部が推奨している発信内容は、注目の新刊やイベント開催のお知らせなど。
「天気の事を毎日発信すると、親しみを持ってもらえます」などという、意味不明なルールもオススメされていましたが…。
これらの他に、
「〇〇フェアの開催に当たり、売り場でのフェア展開の画像を各店のSNSにUPしてください」
というお達しも最近よくあります。
書店本部が出版社や他の業態の会社と協力して全店舗でフェアを行う場合、キャラクター使用の権利等の関係で、展開期間やポスターの掲示方法、SNSでの発信内容まで細かい指示が入ります。
「upする画像に画像に他のキャラクターが写り込まないように」
「手描きpopを作らないように」
「本部が送付した書籍で展開するように」
「否定的な内容をupしないように」
などなど。
ポスター、腰巻き、pop、販促用のシールや栞
を使い、本部からの推奨展開例を参考に各店がほぼ同じ売場を作り、同じような画像を、
同じような時期に一斉にupすることになります。
このような行為が、お客様にとって有意義な情報発信になっているのか疑問ですが、
取り敢えず<〇〇フェアを全店的にやっています>という、出版社や提携した会社への本部のアピールにはなるのでしょう。
とりあえず、店舗数は多いので…。
また、出版社自体が
『装飾コンテストを開催します。該当の書籍の展開画像をSNSにupしてください』
という企画を行う例も最近よくあります。
絵本の新刊発売のタイミングなどが多く、
話題作りにもなるし、書店での力の入った展開ものぞめるし、考えてみると出版社側には一石二鳥の試みです。
「素敵な展開をしてくれたお店にはプレゼントを差し上げます」ということで、参加した店舗には著者のサイン色紙や該当書籍のキャラクターぬいぐるみ、文房具、お菓子の等が贈られます。
書店だと、ポスター、パネル、popを使っての装飾に加え、より派手に見せるには手作りでキャラクターに寄せたものを作ってみたり、棚やテーブルを布や包装紙などで飾り付けたりなどが主な作業です。
アナログで、結構時間がかかります。
また、お客さんに本を安全に手に取ってもらうというのが大前提なので、剥がれたり、外れたりということがないよう、頑丈に作らなくてはなりません。
私は、このような売場装飾をする時間が作れないし、コンテストで良い結果を出すぞ~というモチベーションもないので、このようなコンテスト企画はほぼスルーすることにしています。
話はSNSから少しずれますが、
毎日売場を作っていると、
特別な装飾と、その本自体の売上に特別な関連はないと思うことがあります。
本をただ積んだり、面陳するだけでも、力のある書籍はあっという間に売れていきます。
それは、本、特に絵本の表紙や背表紙には、それ自体が持つ強い力があるからです。
何人ものプロが真剣に、アイデアと念を込めて作った作品。
ただまっさらな形で棚に並べるのが、
実はお客様への一番のアピールではないのかと私は思います。
自分の装飾などあえて付け加える必要はないように感じるし、出版社から渡されるpopも面陳する時に表紙が見えにくくなるので、いらないなと思うこともあるくらいです。
売場を華やかに、楽しくする装飾を全て否定するつもりはありませんが、装飾の拡材を、潤沢に用意できたり、それらのSNS発信を企画するのは主に大手の出版社。良い内容の本を多く出していても小規模な出版社ではほぼありません。
時間と拡材を使い、売場の良い場所に派手な装飾をして、それを他店と比べて競い合う
SNSコンテストですが、
これって一体誰のための、何の意味のある行為なのでしょうか。
出版社に乗せられて参加しているだけで、
本当にお客様にお勧めしたい本ではないのでは?
そして、派手な装飾が、その本自体の良さを消してしまってはいないか?
私にとっては色々な疑問や違和感が満載で、モヤモヤしてしまうのがSNSコンテストです。