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絵本担当と出版社④

ノベルティ戦略

ノベルティとは
“企業が自社や商品の宣伝を目的として、それらの名称を入れて無料配布する記念品を指す。”…wikipedia

とありますが、書店においても、出版社からノベルティをいただく場合があります。

例えば、私が勤務している店では
·空気清浄機
·DVD
·壁掛け時計
·その出版社の有名キャラのぬいぐるみ
·お菓子の詰め合わせ 
·図書カード    などなど。

実は、これらのノベルティのほとんどは、
報奨としていただいたものです。

その仕組みとは
【一年間にその出版社の書籍を幾ら(何冊)販売したか、販売実数を全国の書店毎にカウントし、上位に入った何十店舗かに上記のようなノベルティを大盤振る舞いする】

というもの。

書店勤務の方はご存知かと思いますが、
出版業界に関係のない方は
「そんな仕組みがあるのか?」
と驚かれるかもしれません。

私が勤める書店は児童書が強い書店で、大手出版社の書籍の取扱いが多く、そのためその出版社からノベルティを毎年の様に頂いています。

出版社の営業の方達も
「今年は販売実数が足りていないので、次にこのフェアやってみませんか」などと、
ノベルティを武器に売り込みをかけてきたりします。

こちらもその戦略にまんまとはまって、注文してしまうわけですが…。

この仕組みは
出版社は自社本が売れる
書店は色々なノベルティが貰える

一見winwinです。

しかし、お客様にとって、この仕組みが利益になっているのかという疑問もあります。

報奨を出す出版社の本を優先するために、
同類のもっと優れた書籍を外したり。

売れない書籍=求められていない書籍を報奨を出す出版社の物だからと、棚に置いたり。

もしかして無意識にやっているかもしれません。
これは、常に意識的に考えなければいけないなと思います。

ノベルティの話からは少しそれますが、

報奨については話が簡単でない場合もあります。
それは、本部が関わってくる場合。
【チェーン書店全体で一定冊数を取引する代わりに、ある出版社の書籍の掛け率を何%か下げてもらう】
という契約を本部が結ぶ場合があります。
本部として、全体の売上を考えての施策なのでしょう。
全国展開している書店なので、冊数はかなりになり、少し掛率を下げるだけでも莫大な利益になるのです。

このような契約をした出版社の書籍は、ある期間に、同じ書籍が、売上に関わらず、大量に入荷するので分かります。何もしなくても売れる出版社はここまでの施策は必要無いわけで、小さめの出版社にありがちです。

この場合、本部からその出版社の書籍を優先的に陳列するようお達しがあるので、あまり売れなくても安易に返品出来ません。
売場とストッカーも専有するため、現場はとても困ります。

私は、自動発注が回らず再入荷がないくらいの数を静かに返品したり、本部の言うことを聞かずに敢えて売場に棚差しのみにしたり…
と密かに反抗を試みています。

ノベルティ戦略に話を戻すと、

歴史ある人気キャラクターを持つとある出版社は、
【一年間、毎月5冊数入荷する代わりに、毎月書店員にノベルティをプレゼントする】
という施策をやっています。

また、通年でなくても、一時的に
【ある書籍を何冊以上発注すると、書店員にノベルティプレゼント】

という施策もあります。

最近増えているのが、
【自社の書籍を店舗で飾り付けしてもらい、その様子を各店がsnsにupして、素敵な飾り付けをしたお店にノベルティプレゼント】
というもの。

このような場合にいただけるのは、バッグや、図書カード、文房具、バッジ、お菓子の詰合せなど、お店か個人で貰うしかない物がほとんどです。

出版社のノベルティ戦略は、
何とかして自社の書籍を各店で販売してもらうための苦肉の策ですし、
そこまでしてくれるなら…とこちらもつい戦略に乗りがちです。

ただ、私はお店にノベルティをいただけるなら、高価な物や、個人で使うしかないものではなく、お客様に簡単に頒布出来るものを多くしてもらえた方が有り難いと感じています。

それらをお客様に還元出来たら、お客様も嬉しいし、書店への信頼や好感度が上がるわけで、結果的に各店の為になり、
皆がwinwinの関係になります。

自分達がノベルティを貰いたくて書籍を販売している書店員はほとんどいない(と私は思っている)し、
日々販売を頑張っているのはお客様に良い書籍を(私の場合は児童書)を手に取ってもらいたいからです。

出版社の方達には、ノベルティ戦略を考える時、書店員の先にいるお客様にも目を向けてもらいたいなぁと、感じています。

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