絵本担当と出版社⑧
フェア色々
季節に敏感な(であることが求められる)書店という業態。
大型チェーン書店では、一つのテーマに沿って関連書籍を集めて様々な『フェア』を展開し、季節感を前面に打ち出す店作りをしています。
フェアは通常は地味な店内に看板、のぼり、など様々な拡材で彩りを添えてくれる存在です。
絵本担当をしていると、営業の方たちによく勧められるのは、
"ちなんだ"書籍のフェアです
干支、猫の日、、バレンタイン、震災などの『日にち』ちなんだものや、
食べ物、乗り物など『ジャンル』にちなんだもの。
実用書だと『場所』ちなみもあるかもしれません。
"ちなんだ"書籍フェアは、色々バリエーションもあり楽しいのですが、一つ難点があります。
それはフェアを開催してもその内容に興味を示してくるお客様が少ない事。
(のりものは例外ですが)
特に『日にち』にちなんだフェアはそれが顕著です。
これは、書店の立地や客層にも関係あるので、良い悪いの問題ではありませんが。
お客様にとっては、〇〇の日だからといって、関連の「本」を買おうという行動にはあまり結びつかないのかもしれません。
これらのフェアは、売上はあまり期待できません。なので、本部などはまずやりません。
そして、出版社は逆にこういうフェアを作りたがる印象があります。
トピックとして考えやすいからなのでしょうか。但し、関連書籍を集めるのは一つの出版社では限界があるのか、あまり関係ないように思える絵本も取り上げられている事も多々ありますが…。
小売的には価値が低いかもしれませんが、
書店を文化的な場所と捉えると、この"ちなんだ"書籍フェアようなフェアも価値があると私は思っています。
その他には、季節毎にお客様に必ず求められる書籍のフェアもあります。
クリスマス、家計簿や年賀状、占い
春は入園·入学、語学テキスト、
夏の自由研究、復習ドリル
このようなフェアは書店本部が年間計画に組み込み、一括で取次に発注します。
各店は何も考える必要がありません。
年中行事的なもので、楽チンでもあります。例年大量な商材の入荷で展開に苦心しますが…。
本部主導のフェア以外には
出版社が得意分野で決まった時期に組む大型フェアがあります。
例えば、文庫やコミックの〇〇祭のようなものや、人気児童書の新刊が発売される時のフェア、映画化の原作フェア、多くのタイトル数がある児童向け書籍のフェアなど。
この類のフェアは、ノベルティが無駄に豪華な事が特徴です。
凝った栞やホログラムカード、メモ帳、
クリアファイル、下敷き、巾着、消しゴム、
タオルなどなど…。
先日は遂に本格的なガチャガチャが登場しました。
このようなフェアが集中すると困るのが、
ノベルティを付けなければならない書籍が多くなり、レジの度に緊張を強いられる事。
(ノベルティのつけ忘れがクレームになることもあるので。)
そして、レジ後ろの棚がゴチャゴチャになり、訳がわからなくなる事も。
本部主導や、出版社主導以外に、各店主導でミニフェアを行う事もあります。
この場合、企画も選書も展開も全て書店員自ら行うので、ノベルティなど無いし、大掛かりには出来ないので、小規模のフェアになります。
普段は入荷することのない掘り出し本を敢えて並べてみたり、切り口を考えてみたり、このような独自フェアの良いところは書店の個性が出るところではないかと思います。
私がよく行く大型書店では、毎年必ず[空のフェア]を開催しています。おすすめ本の本格的な小冊子まで作られていて、きっとこの分野が好きな書店員の方がいるんだろうなぁと思いながら覗かせてもらいます。
上記の以外にも、出版社の創立周年フェアや、作家別フェア、何社かが合同で行う絵本フェアなど、書店では色々な切り口でフェアを行ってます。
「こう、来たか!」と思えるようなフェアに出会えるとその書店に来た甲斐があったと、嬉しくなります。
そこの書店員の方に敬意を表しつつ、参考にさせてもらっています。