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案件絵本③プロモーション絵本


案件絵本…扱いに気を使う絵本のこと

エンターテイメントやファッションの企業が絵本を出版する場合があります。
その企業が舞台となり、主人公が冒険していく…というような展開の絵本もありました。
企業のプロモーション絡みで出版されるのでしょう。
このタイプの絵本をここではプロモーション絵本と名付けてみたいと思います。

私が勤務しているのはチェーン書店なので、入居しているストアのテナントがプロモーション絵本を出版すると、ストアの本体の事務所からお達しがあり、本社経由でこのような絵本を扱う羽目になります。

該当のテナントだけに置けばそれでよいのでは?と思うのですが、そこは餅は餅屋ということでの依頼なのでしょう。

そして案件絵本なので
『本部から目立つ場所におきなされ!とばかりにポスターや販売台、時にはサイン色紙込みでいきなりかなりの冊数が着荷し、場所をとる』
ということになります。

このプロモーション絵本は、企業が自主出版の様な形態で出版する事が多いので返品不可本の場合があります。
返品できないので、店舗で売り切るまで
棚に置き続けなければならない…と厄介なのです。

実際には、大量のプロモーション絵本を店舗で売り切るのは至難の業です。
いずれはほぼ全部が在庫になり、「ゾンビ絵本」となります。
ゾンビ絵本=ストッカーにしまわれ、永遠に日の目を見ない絵本。
私が勝手に名付けています。

こんな哀しい状況を避けるべく、出来る限り棚に差して売場に出すようにしています。
しかし、売れない絵本は経年劣化でどんどん絵本が傷んでいき、ますます売れなくなりストッカーへ…という悪循環にはまりがちです。

しばらくすると、プロモーション絵本は、在庫を圧迫するということで0円に売価変更処理されます。
そして最終的にはゴミとして原型を留めないように解体した後、廃棄処分となります。

こういう例は稀です。
しかし、今まで何点かこのような処理をせざるを得なかったのも事実です。

思いを込めて作られたものをゴミとして捨てるという行為はどんな絵本であっても本当に心が痛みます。

しがらみで扱う事をを決め、各店の配本数を入力している本部の発注担当は、こんなプロモーション絵本の末路には思い至らないでしょう。

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初っ端から、絵本販売のシビアな現実や、案件絵本として扱いに気を使う厄介な絵本の事を書きました。

絵本に対して夢を持っている方が読まれるとガッカリしてしまうかもしれません。

ただ、長い間、絵本を販売する立場にいると、「絵本が好きだ」という純粋な気持ちだけではなかなかやっていけなくなります。

「絵本が好きだから絵本の担当はしない」と言っている同僚がいますが、気持ちがよく理解できます。

私も絵本は大好きなのですが、販売の視点から観ると色々な事を考えすぎて、自分の好き、嫌いだけで本を選べなくなってしまうのです。

このnoteには、絵本周りの色々な出来事を綴りながら、仕事の事を自分なりに考えていきたいなと思っています。

何処かの絵本を売っている人が、何か言ってるなぁ位の気持ちでお付き合いいただけると嬉しいです。

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