K 8回忌の弔い
返さぬまま
実家に置きっ放しだったビデオ
これを借りたのは確か
松陰神社の近くのアパート
いや
定かでない
その時家で日本酒を飲んだ後にしょっつるを入れた雑炊を食べさせてくれた
これもまた曖昧な記憶
もしかしたら
あの時が元気な彼女に会った最後の時だったのかもしれないし
違うかもしれない
いつ何をしたかはっきりしない事ばかりだけれど
沢山の姿をはっきりと思い出す
私は思っていたより彼女が好きだったのだと今更思う
目に見えないところが
純粋で
繊細で
不器用で
ずるいところがなくて
かわいい人だった
出会った頃とすっかり変わった姿にも
私はシャッターを切れば良かったのだろうか
切らなくて正解だったのだろうか
撮りたいと思わなかった
それだけのことか
しかし例えばそれが
写真と決別しようとしている時ではなかったのなら
違っていただろうか
今の私ならば
姿の変わった彼女を撮るだろうか
こたえの無い問い
はなから深く考えるつもりはなく
ただ
今年も彼女を思い出すことが
私なりの弔い
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