二日酔いとお婆さん(超短篇小説)

前の日に飲みすぎた若いサラリーマン。通勤電車の山の手線で座っていると、目の前にお婆さんが立っていた。
サラリーマンは
「どうぞ」
とお婆さんに席を譲った。お婆さんは、
「すぐに降りますから」
と言って席を譲られるのを断った。
内心ホッとしてそのまま座っていると、ある学生が席から立ち上がり、お婆さんに
「どうぞ」
と席を譲った。どうせすぐ降りるのにと思っていたら、お婆さんは
「ありがとうございます」
と席に腰掛けた。あれっと思いお婆さんに目をやると、お婆さんは
「あんた、二日酔いでしょ。酒臭いし、顔色も真っ青じゃない」
と笑った。まわりの乗客からクスクス笑い声が聞こえた。サラリーマンは恥ずかしいので寝た振りをした。
気がつくと、山の手線は一周回ったようで、いつも乗る駅に着いていた。もちろん会社は遅刻。良いことをしようとした結果の最悪の結末を迎えた。

<一部実話です。もちろん若いサラリーマンが昔の私です>

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