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境界線 冬の寺にて《詩》

東京タワーが足元を震わせる季節に、僕は死の気配の漂う場所に立つ。
雲は魂のように風に流され、生が体中を駆け巡る。
歴史はいつも地下に埋もれる。空気に紛れないようにするのだから、それも仕方ない。
清き水には悪魔しか棲まない。だから人は金で水を汚す。
血の色に染まるモミジはまだ生きている。最期の足掻きなのか、それとももうあきらめているのか。
人にはわからない世界が人のまわりにこんなにたくさんあるなんて、なぜ誰も気づかないのだろう。
寺の外に出ると、人にしかわからない世界に戻された気分になる。
境界線は誰の目にも映っていない。

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