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第5話 ぼくとおばあさん

ぼくとおもいでどろぼう

第5話 ぼくとおばあさん

おばあさんは言った

「おもいでどろぼうはね、ひとから大切なものをぬすむやつなのさ」
「お金でも、宝石でもなく、おもいでをぬすんじまうのさ」

それならいいじゃないか、とぼくは思う

お金があれば、旅はできるし 食べものも食べられる
コーヒーだって飲めるし また新しいひとにも出逢える

それにほら
何もかもが知らないことって、ワクワクするじゃないか
ぼくはこれまでワクワクしちゃう大冒険をしてきたんだ!

おもいでなんてなくたって、旅はたのしいし
いつもうたって、前へとつきすすめる

前へつきすすんでいればこわくない!

そうやってぼくはおばあさんに話した

だけど、おばあさんは、少しさみしそうな顔をしている

「あのね、ぼうや、聞いておくれ、、、」

おばあさんの目がひかっていた
目からは水がながれてくる
これは、なみだっていうやつだ

ぼくは逃げたくなった
目の前のなみだから逃げたくなった
だから、逃げた
おばあさんからぜんりょくで


ぼくは後ろへ逃げた
これまで、前ばかり進んでいたのに、ぼくは後ろに走って逃げたんだ


なんだかこわいんだ
おばあさんのなみだが

なんだかこわいんだ
おこられてしまいそうで

ぼくはこわいんだ、、、

たくさん走った たくさん逃げた
後ろにむかって、とにかく逃げた

ぼくは後ろに逃げていたのに、目の前にはおばあさんがいた
ぼくは頭をななめにした

さっきのカフェもあるじゃないか

ぼくはおばあさんから逃げたのに
なんでぼくの前におばあさんがいるんだろう?
なんでぼくの前にさっきのカフェがあるんだろう?

ぼくはわからない よくわからない

おばあさんの顔にはなみだはもうなくて
あたたかい顔になってた

おばあさんは、そのあたたかい顔で
「さ、いっしょにコーヒーを飲みましょう」
と言った

もちろんぼくはミルクとさとうをいれるさ




ぼくはコーヒーにミルクさとうをいれたものを飲みながら、
おばあさんとお話した
おばあさんはぼくに、この世界のひみつってやつをおしえてくれた


おばあさんによると、
ぼくたちはおもいでがないと、前へすすむことはできないらしい
前へすすんだつもりでも、同じとろこに戻ってきてしまうらしいんだ

ぐるぐると同じところをすすんでしまうんだとか

なるほど
ぼくはおもいでどろぼうに、おもいでをぬすまれたから
前へすすんでも、同じカフェに来てしまっていたんだ

ぐるぐる ぐるぐる
ぐるぐる ぐるぐる

同じ道を歩いていたんだ

でも

でもどうして?

どうして、おもいでがないだけで、同じところをぐるぐるするの?

そうおばあさんに聞くと、わからないと言う

「じぶんで聞いてきたらどうだい?」
と、おばあさん

はてさて、だれに聞けばいいんだろう?

「おもいでどろぼうにさ」
と、おばあさん

そっか、なるほど!
おもいでどろぼうに聞けば、きっといろんなことがわかるのか

よし、おばあさん
ぼくはおもいでどろぼうにあってくるよ!

ぼくはいそいでリュックをしょって
したくをした

ところで、おばあさんは、おもいでどろぼうと友だちなの?
ぼくはおばあさんに聞く

「わたしもたくさんのおもいでをぬすまれたからねぇ」

ぼくはムッとする
だって、ぼくからもおばあさんからもおもいでをぬすむなんて
いやなやつだ!

ぼくの顔を見て、おばあさんはふふふと笑った

「だいじょうぶよ、わるいやつじゃないわよ」
「わたしは、おもいでどろぼうのこと好きよ」

ぼくは頭をななめにした

ぼくたちからおもいでをぬすんでるやつが
わるいやつじゃないってどういうことだろう?

どろぼうははんざいなんだぞ

ぼくはわからないままカフェをでた


おばあさんが言うには、
そいつはひとじゃないけど、言葉を話すし
ものじゃないから動くらしい

なんてへんてこりんなやつだ
きっとへんなやつにちがいない

ん?

へんなもの?へんなやつ?
へんてこりん?

ぼくはうっすらおぼえている気がした

もしかして、、、?

ぼくはいそいで、いつもへんてこりんがあるところに行ってみた

今日もそこにはへんてこりんがあった

ぼくはそいつに聞いた

「きみがおもいでどろぼうなのかい?」

すると、へんてこりんは
「そうさ、オイラがおもいでどろぼうさ」
とこたえた

おもいでどろぼうはすぐに見つかった




ぼくとおもいでどろぼう
第5話 ぼくとおばあさん


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