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名画『モナ・リザ』に“神の子羊”と“天使の翼”を見た経緯と考察 #7
#7 さらなる人物
この時点で私は、『モナ・リザ』のモデルは、サライとリザの二人で決まりだと思っていました。しかし、そもそもなぜこの二人をこんな風に半分ずつ描かなければならないのか、その理由がわかりませんでした。ただそのとき、観者から見て正面に男性がいて、その左側に女性がいるという構図が妙に気になったのです。
そこで、レオナルドの描いた絵の中にそのような構図をもつ絵がないかネットで探したところ、『最後の晩餐』が私の目にとまりました(図19参照)。
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この絵は、イエス・キリストと12使徒を描いたものであり、女性はいないとされています。しかし、私には、イエスの右隣りに座っている青い服を着た人物が女性に見えたのです(図20参照)。一方、定説では、この人物は『使徒ヨハネ』と言われています。
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『最後の晩餐』の場面は、イエスが12使徒らと共にとった食事の際に、『12使徒の中の一人が私を裏切る』とイエスが突如予言した時の情景が描かれているものです。そのため、使徒たちはイエスのその発言に驚いて慌てふためいています。
しかし、この青い服を着た人物だけは慌てているようには見えません。むしろとても落ち着いているようにみえます。つまり、この人物は12使徒の中の一人ではないということではないでしょうか。疑いをかけられている対象ではないから慌てる必要がないというか、この人物の表情には、イエスのことを心配して憂いを抱いているようにも見えました。そのため、もしかしてこの人物は、イエスの母親である聖母マリアなのではないかと一瞬思ったのです。
ですが、この人物が仮に聖母マリアだとすると、『使徒ヨハネ』はこの絵の中に描かれていないということになってしまいます。そこで私は、ヨハネを見つけようと思いました。
『最後の晩餐』はもちろん食事のシーンを描いたものです。テーブルの上には、ナイフで切り分けられた魚(もしくは肉?)が皿の上にのせられています。聖書によると、食事の準備をイエスから言われたのは、使徒ペトロと使徒ヨハネです。
『最後の晩餐』では、使徒ペトロが右手にナイフを持っているように見えます。でも私には、その右手の角度に違和感を覚えました。ちょっと無理があるような気がしたのです。そこで、もしこの右手が使徒ペトロの右手ではなかったとしたら・・・そう考えたとき、この右手は使徒ヨハネの右手なのではないかと思ったのです。そうすると、使途ペトロの左手だと思っていた手が実は使徒ヨハネの左手なのではないかということにも気が付きました(図21、図22参照)。
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つまり、この絵で『使徒ヨハネ』の身体は、『使徒ユダ』の後ろに隠れてしまっているのです。このときの状況はおそらく以下のような感じだったと思うのです。
イエス・キリスト:この中(12使徒)の一人が私を裏切るだろう。
使徒ペトロ:な、なんですと? イエス様、今、なんと申されたのか? イエス様! あっ、ヨハネ、このっ、貴様邪魔だ! そこをどけ!
使徒ヨハネ:あっ
使徒アンデレ:うわっ!(ペトロ! ヨハネ! お前たちあぶないじゃないか!)
想像するに、用意した料理の魚(もしくは肉)をイエスのそばで切り分けていた使徒ヨハネは、激高するペトロに右手を突然引っ張られてユダの背後に隠れてしまったのです(図23参照)。そして、使徒ペトロの隣にいた使徒アンデレは、使徒ヨハネのもつナイフが突如自分の前に突き出されたものだから両手を上げて驚いたのです。つまり、使徒ヨハネも、手だけですが『最後の晩餐』の中にちゃんと描かれています。そうすると、青い服を着た人物はやはり聖母マリアなのではないかと思うのです。
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もちろん、上記のことは単なる推測にすぎませんが、『最後の晩餐』に聖母マリアが描かれていると仮定したとき、もしかしたら、『モナ・リザ』にもイエス・キリストと聖母マリアが描かれているのではないかと考えたのです。つまり、サライはイエス・キリストのモデルであり、リザは聖母マリアのモデルあるということです。