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名画『モナ・リザ』に“神の子羊”と“天使の翼”を見た経緯と考察 #9
#9 鏡像のイエス(その1)
2つの橋が聖母マリアを示していると気づいたことによって、『モナ・リザ』の右側に描かれている“曲がりくねった道”の部分が、イエス・キリストを示していのだろうと思いました。“橋”は人の存在を示唆するものです。そのため、人の存在を示唆するものが他にないか探したとき、“曲がりくねった道”しかなかったからです。
しかし、この“曲がりくねった道”が何を意味しているのかが初めは分かりませんでした。イエス・キリスト(Jesus Christ)のイニシャルを表しているはずですが、『J』でも『C』でもなく、『S』の左右の向きを逆にしたような文字だったからです。そこで、ネットで調べたところ、生前のレオナルドは、左利きだったということもあってか、“鏡文字”を多用していたことが分かりました。
つまり、“曲がりくねった道”は“Sの鏡文字”であり、結局はアルファベットの“S”の文字を表していることになります。そのとき、私は、前にサライのことを調べていたときに出てきた『サルバトール・ムンディ(Salvator Mundi)』のことを思い出しました(図30参照)。
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『サルバトール・ムンディ(Salvator Mundi)』は、1500年ごろ、フランスのルイ12世のためにレオナルドが描いたもので、『洗礼者聖ヨハネ』や『バッカス』と同じく、この『サルバトール・ムンディ』のモデルもサライだったのではないかと言われています。サルバトール・ムンディ(Salvator Mundi)』は“世界の救世主”を意味するものであり、それはイエス・キリストのことを意味しています。
さきほどの、聖母マリアとリザの『m』の場合と同様に、レオナルドは、サライ(Salai)の『S』とサルバトール・ムンディ(Salvator Mundi) の『S』を重ねているのではないかと考えました。
また私は、なぜ“鏡文字”を使用する必要があるのかという疑問を持ちました。聖母マリアの『m』の文字は鏡文字ではありませんでしたから。そこで、この“鏡文字”はもしかするとメッセージになっているのではないのか? つまりレオナルドは、ここの部分を鏡を使って見てみなさいと言っているのではないかと考えたのです(図31参照)。
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そこで、パソコンの画像編集ソフトを使ってここの部分の画像を反転させて、元の画像と合わせてみせてみました(図32参照)。
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すると、上の方には何かのボトルのようなものが現れ、下の方にはグラスのようなものが現れました(図33参照)。
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はじめにこれらを見たとき、これらのそれぞれは“聖水(もしくは聖血)又は聖血”および“聖杯”だと思いました(図34、図35参照)。なぜなら、この2つのアイテムは、そのディテールがとても丁寧に描かれており、ここまで力を入れて描いているということは、何かとても重要なアイテムであることを意味していると思ったからです。先の『聖母マリア』のことをふまえると、キリスト教に関係するものだと思いました。そして、これらのアイテムから連想される人物は、私には“イエス・キリスト”しかいませんでした(図36参照)。
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ネットで調べたところ、一説では、『モナ・リザ』の背景は、実在する場所ではなく、レオナルドが想うある種の“理想郷”を描いたものらしいのです。もしそうだとすれば、その“理想郷”の住人としてもっともふさわしい人物はだれか? そうです、“聖母マリア”と“イエス・キリスト”です。レオナルドは、この二人のイニシャルを“理想郷”の中に潜ませることによって、理想郷の住人にしたのだと思います。
つまり『モナ・リザ』は、慈愛の象徴である『イエス・キリスト』と『聖母マリア』のそれぞれに、リアルな愛に包まれ満たされていた二人のモデル『サライ』と『リザ』を重ね合わせて、これらを融合させたもの、それが私の解釈した『モナ・リザ』の正体です(図37~39参照)。
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愛に満ちた4人のモデルを重ねて統合させたものだと分かった瞬間から、この絵に対する私の見方は全く違うものになりました。この絵は、その微笑みを介して見るものに愛を与えてくれる……いいえ、愛の存在を気づかせてくれるといった方がいいかもしれない、そういう絵だと思えたのです。
尚、『モナ・リザ』の眉毛とまつげが明確に描かれていないのは、もし描いてしまうと、サライとリザの男女二人をモデルにしたことが容易にバレてしまい、人物画として破綻してしまう恐れがあったからかもしれません。