【詩】カローンの娘たち
まな板の上には洗いたての人参
光は花の形で
咲きこぼれ
咲きこぼれ
ああ
あふれてしまう
そろそろわたくしの娘たちは
息子たちを殺せただろうか
うつくしく
切ることはできただろうか
その腕を
そうね
もう少しだけ教えておくのだった
包丁の研ぎ方も
飾り切りのしかたも
もう渡す事ができない
ひつようなことなど
そんなに多くはないのに
いつもいつも間に合わない
歌は向こう岸へは届かず
舟は行ったきりで
花が花である事はなんと難しいのだろう
みずみずしく切り刻まれた人参は
湖に命を捧げ
再びの朝のために溶けてゆく
帰っておいで
娘たちよ
吐息になって
その河を渡って
帰っておいで
もう一度、殺し方を教えてあげるから
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