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それはむかしむかしのこと 崖っぷちの狭いくるわの墓地には 浮き立つような気配が満ちていた。 土を掘る男たちの掛け声 女たちがひそやかに交わす笑い声 厳粛さに飽いた子供らの 調子っぱずれの草笛 あれは確かに祭りだった とむらい、という名の いま 真新しい祖母の墓を暴く私たちの耳に 聞こえるのは川の音ばかりだ。 ──寂しいじゃねえか、こんな冷たくて空っぽの部屋に たった一人閉じ込められて土にも戻れねえでいつまでも いつまでも骨のまま、一人ぼっちだなんて 石室から取り出