Day15.繊細なこどもだったの頃の話。
小さいときのわたしは、ちょっとしたことで落ち込んだり、ご飯が食べられなくなったり、眠れなくなったりしていた。
例えば、遊びに夢中になっていて花壇にうっかり足を突っ込んだときに花を踏み潰してしまったことに罪悪感に苛まれ、しばらくその花壇のまわりに行けなくなった。
ひな祭りに飾ってもらった雛人形を片付ける時、暗い押し入れに入れられる人形を想像して、布団の中で泣いた。
教室の窓枠に止まっていたてんとう虫をつついたら、てんとう虫が飛び立たずに下に落下していき、殺してしまったのだと思ったわたしは給食が飲み込めなくなった。
気分が沈んでいることに気づいてくれるのはいつでも母で、ぼそぼそと打ち明けると「そうか〜、悲しかったな〜」とまず気持ちを理解してくれた。
それから、「だいじょうぶだいじょうぶ」と膝にのせて抱きしめてくれた。
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今は、花を踏んでしまっても(踏む機会もそうそうないけど)落ち込んだりはしない。しないけど、幼いわたしの感情が振れたそれらのできごとを「あんなことで」とは思わない。そう言わなかった、母のようにありたいと思うから。
あの頃のわたしにとっては、重大で、深刻なできごとだった。
誰かの一大事にも寄り添える人でいたいなと思う。
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夕食の買い物に出た時、近所のグラウンドの花壇でてんとう虫を見つけて思い出したので書いた。
おわり。