トンニャン最終章#11 フェアリー リジュ
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
話の位置は「サルガタナスの巻」の次、「リジュの巻」のような意。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
うずまく波、降り止まぬ雨。沈んでいく人間たち。
遠くに方舟と呼ばれた乗り物が飛んでゆく。飛行機、というよりロケット、というべきか。
サーティ様は、何をそんなにおもしろがっているのだろう。
リオールが純粋な天使と気づいて、アスタロトに教えたのはリジュだった。もう、何十年も前。まだ、サーティがアスタロトの妻でもなく、リジュがアスタロトの想い人ではなく、ただの召使い。時々情をかけてもらえるだけの、召使いの頃だった。
【フェアリー リジュ】
リジュは、薄い蜻蛉のような羽を持つ妖精だ。人間界の森の中で、仲間たちとひっそりと暮らしていた。
ある時、人間界に降りた悪魔の君主 アスタロト公爵に、ひと目惚れしてしまい、アスタロトについて魔界まできてしまった。
天使と近い能力を持つフェアリーは、アスタロトに重宝され、夜のつとめまで課せられる。しかし、アスタロトを愛するリジュには喜びであった。
ある日、突然現れた大魔王ルシファーの娘・悪魔皇女サーティ。サーティとアスタロトが婚姻を結んだことにより、リジュも嫌がうえにも、魔界の政争と無縁ではいられなくなってゆく。
「おい、サーティ。これじゃぁ ズブ濡れ・・・」
サッとシャボン玉のような球形が、アスタロトを包んだ。見ると、サーティをはじめとして、サルガタナス・マルコシアス、そしてリジュもシャボン玉よりずっと丈夫な透明な球形の中にいた。
眼下は嵐。竜巻によって大きな渦ができて、それらに飲みこまれる船や人々がいた。
「ノエルの船は、とっくに飛び立ったようね。」
「ノエル?」
「新しいノアの名前よ。妻はメアリー。彼ら夫婦の子どもや孫、そして、かつてのノアと同じように、つがいの動物たちが方舟に乗っている。違うことは、船と言っても、実際はロケット・・・シャトルのような形をしている。時代の違いね。」
サーティとアスタロトの会話をぼんやり聞きながら、リジュは大波や竜巻を見続けている。
妖精の力は、彼らを助けるほど強くない。まして、悪魔のしもべとなった自分には、もう無縁のことだ。ただ、アスタロトのためだけに生きてきた。アスタロトに愛の告白を受けた時すら、畏れ多いと常に後ろに下がってきた。後からサーティが正妻になった時も、もともと召使いなのだからと、諦めてきた。
諦め?諦めていたのか?
リジュは、あらためて自分の気持ちに驚いた。何も感じず、考えず、ひたすらアスタロトに仕えることが幸せ。そう信じてきたのではなかったか?
諦める、など、考えたことが無かったはずではないか?
「リジュ!!」
大きな声が、リジュを正気にさせた。しかし、時すでに遅し。竜巻がリジュの透明な球形、バリアに直撃した。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン最終章#11 フェアリー リジュ
※リジュも、数少ないオリジナルキャラクターです。
アスタロトとリジュのお話は、
アスタロト編「悪魔の君主 アスタロト公爵」こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n7087d9da610b?magazine_key=mf04f309d9dfc
【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
次回トンニャン最終章#12 リジュへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n6dfc221fc1ae
前回トンニャン最終章#10 サルガタナスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n6293bea9ed82
トンニャン最終章、最初から読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/mb128933fa182
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