エンドレスヒールⅡ-3.11 #4あさみの場合
2011年4月1日~
4月に始まった短期のアルバイト。
決まった時は、まさかこんな大きな震災が起きるとは思っていなかった。
また、S県N市の市民図書館は、阪神大震災後に建てられているので、耐震は確かなものと思われた。
しかし、実際に初めてバイトに行った日、震度6強は予想をはるかに超えていたようだ。
「壁に亀裂が入っているところは危ないから、気をつけて」
「雨漏りしてるところもあるから、バケツに、足元に気を付けるように。」「天井が一部、はがれているから、その下には立たないように。」
覚えきれないほどの注意事項は、実際の内部に入って中を見ると、言われなくても注意せざるを得なかった。
「水月(みずき)さん、二人組で並べるから、並べ方教えてもらって。」
職員さんの指示で、何ヶ月か先輩のアルバイトの方と組んだ。
「唯野(ゆいの)です。一緒に並べ替えしましょうね。」
「水月浅海(みずき あさみ)です。よろしくお願いします。」
唯野に付いて書棚を回る。
「ここが、まだ誰もやってないから、ここにしましょう。」
唯野は、書棚の位置を決めると、次に背ラベルについて説明始めた。
「一段目は数字の通り若い数字から並べるんです。二段目は、作者名と年代が入っているから、細かいから気をつけてね。」
「三段目は、○○巻という順番が多いけど、物によっては同じ本の複本(同じ本が二冊ある)の場合でも『2』って書いてある時があるから、気をつけてね。」
「作者名はカタカナだけど、アイウエオ順と覚えていてね。」
言われた時は、わかったような気になる。
しかし、実際は微妙な書き方も多く、勘違いや、読み間違いもあり、難しいものだった。
背ラベルの数字もカタカナも、小さい字だ。
「たとえば、3と8、1と7、6と9とか間違いやすいから。」
「カタカナも、ウとワ、アとマ、タとク、まだまだ間違いやすいのがあるから。
まず一段目が合ってるか、次に二段目と、急がなくていいから、正確に、ね。」
2011年6月4日(土)
続く
エンドレスヒールⅡ-3.11 #4あさみの場合
私は泣いていない。理屈で理解しても、感情では納得していない。
私はもう一生、大丈夫にもならないし、落ち着くこともないだろう。
次回エンドレスヒールⅡ #5はこちらから
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