トンニャン#42 太陽神アポロン
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「アポロンの巻」のような意。話の位置は前回の「リリスの巻」の次、書籍化した「阿修羅王」の1~3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」(インドの神様編)の続きとなります。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「なあに、おにいさま。笑ったりして」
「ごめん、ごめん。急に何を言い出すのかと思ってさ」
アポロンはティーカップをテーブルに置くと、また少し笑いながらチェリーに顔を向けた。
「ダフネのこと、言ってるの?」
「う・・・うん・」
「彼女は美しい人だったよ。姿だけではなく心もね。だから、彼女との事は、美しい思い出。遠い遠い昔のことさ。今さら、クビドのことを、どうのこうのと思ってやしないさ」
チェリーは納得できないように、少しの間黙っていたが、思いついたように、また話し出した。
「アルテミスおねえさまのことだけど」
アルテミスの名前を聞いた途端、アポロンの顔が初めて曇った。
「アルテミスは・・・」
アポロンは立ち上がると、そのままバルコニーに出て行った。チェリーは、急いでその後を追った。
「アルテミスは、ほかの兄弟とは違う。双子で、わたしが太陽、彼女が月。しかも、決してけがされることのない月でなければならなかった」
「やはり神話の通りなの?」
「神話?」
「神話には、おにいさまが、アルテミスおねえさまの恋を邪魔した話もあるわ。その・・・処女神にあるまじき行為として、おねえさまを律したというか・・」
「取り方は様々だ。いろいろな解釈ができるからね。でも、ほんとうのことは当事者でなければわからない。そのことを、今さら誰とも議論するつもりはない。何を言ったからといって、もう何も変わらないからだ」
******
「アルテミスを見捨てるのか」
あの遠い日の夜、眠っているアポロンの枕元から突然声が聞こえ、目を覚ました。
「トンニャン?何故あなたが?あなたは歴史に介入できないはず」
「わかっている。わかっているが、あえて言う。今、アルテミスを見捨てれば、おまえはこれからずっと後悔にさいなまれるだろう。おまえにとっての唯一無二の双子の妹ではないのか?」
アポロンは、複雑な表情でトンニャンの話を聞いていたが、哀しそうに首を振った。
「わたしもアルテミスも、神という名をいただいてはいますが、天帝のもとに集う天使となんら変わりはないのです」
「実の妹でもか?」
アポロンは目を閉じた。
「トンニャン、あなたこそ何故そこまでアルテミスを?」
「・・・同じ双子を、遠い昔から見てきたからだ」
アポロンが目を開いた時、もうトンニャンはいなかった。
*****
「ミカエル様が、その時の事をおっしゃっていた事があったわ。いえ、何を、ということじゃないのよ。ちょっと・・・その、気にしてらしたように感じたの」
「・・・トンニャンの考えている事は、わたしにもわからない。わたしは、天帝に従い、天帝に尽くし、天帝を信じてゆくのみだ」
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン#42 太陽神アポロン
※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
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https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】
※トンニャンが全部読めるマガジンはこちら
https://note.com/mizukiasuka/m/mf04f309d9dfc
次回トンニャン#43 太陽神アポロンへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n73ea787ef9b8
前回トンニャン#41 太陽神アポロンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/neb5d305a4946
最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46