元祖 巴の龍#62
「兵衛兄上、お願いがあります」
菊之介は改めて兵衛を見つめた。
「芹乃殿ときちんと話し合ってください。
たとえ答えがひとつしかなくとも、ちゃんと話をするのが、男のけじめではないでしょうか」
「そうだな。菊之介の言うとおりだ。芹乃とは明日会って話をする。男の責任として」
菊之介はふてくされている大悟にも言った。
「これでいいですか、大悟兄上」
大悟はしぶしぶ頷いた。
菊之介、大悟、兵衛が家の中に戻ろうとした時のことであった。
夜だというのに、屋根の上を数千羽鳥の大群が飛び回っている。
驚いて空を仰ぐと車を引いて龍がやって来るのが見えた。
菊之介と兵衛は太刀を構え、大悟は弓を取りにいったん家の中に戻った。
車を引いた龍は、キラキラと五色に輝き途方もなく大きいもので、兵衛の家をみるみるうちに覆うと、屋根に降り立った。
「我が名は龍車なり、おまえ達は涼原の三兄弟だな」
ようやく大悟も弓を持って現れた。
龍車が五色の光を放つと、菊之介、大悟、兵衛も光りだした。
大悟は、
「ごめん!」
と言って、兵衛の背中の衿をつかみ引っ張った。
まさにそこには、菊之介、大悟と同じ形の龍の紋章が現れた。
大悟は自分に右腕をまくり、菊之介も胸を開いた。
三つの紋章が一つの輝きとなり、そして龍車の光と真正面からぶつかった。
「おのれ、光といえば我が身が上じゃ。人間に宿りし者に負けるものか」
眩い光合戦が繰り広げられる。
「兄上、これではらちがあきませぬ。龍車の光も我らの光も収まらないとすれば、戦うよりありませぬ」
二人の兄も頷いた。
「光で目が開けられないとすれば、感に頼るのみ。
わたしと兵衛兄は太刀にて飛びかかります。
大悟兄は矢を射てくださりませ」
「しかし菊之介、目を開けずに矢を射れば、兄上やおまえを射るやもしれぬ」
「いや、菊之介の策が上策。
わたしと菊之介のことは考えず、矢を射るがよい」
続く
ありがとうございましたm(__)m
※龍車も今までの妖怪も、江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕の妖怪画集から、調べたものです。(ゲゲゲの鬼太郎のファンですから(´艸`*)※
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
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