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かげろう奇譚Ⅱ #14

小学校の3・4年だったか、もう記憶も定かではない。
和美はいつものように、母と銭湯に行った。

湯上り、いつものように道をわたり、向かい側の我が家に帰ろうとした時、夜なのに ひどく明るいことに きづいた。
渡りながら南の空を見ると、銭湯の通りと我が家の通りを挟む道路をまたぐように、大きな月が輝いていた。

あまりに大きな月なので 全体は見えず、
月の上部半分くらいで 道路のずっと向こうの川がすっかり覆われている。

それは とても鮮やかな黄色で、さらに朱く血の糸を引くような筋が、
しかし それは美しく 月の黄色と 朱がみごとなコントラストを描いていた。

しばし月にみとれる和美を置いて、母はそそくさと家に入ろうとしている。和美はあわてて道路を横切り、家に入る直前に 母に話しかけた。

「今日のお月様、大きくてとっても きれいだね。」

母は 返事をしなかった。

かげろう奇譚Ⅱ #15に続く

かげろう奇譚Ⅱ#14


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