トンニャン#9 悪魔皇太子リオール(クビドと対の天使)
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「リオールの巻」のような意味。話の位置は、アスタロト公爵の#10の直後のお話です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
「一つ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「クビドは、幸せになれる相手と、めあわせているんだろう?
だったら、何故人間は離婚するんだ?」
「それについては俺が答えるよ」
アシュラがふいに顔を出した。
「昔々は、幸せになれる相手に矢を射ても、人間達が自分の利害関係で勝手に婚姻を決めたから、不幸になる者もいたんだ。
ここ何世紀かは、愛情が無くても、貧しさゆえではなく、こずかい銭欲しさに、体を売ったり、自分自身が愛情より、お金を選んでしまうことが増えてきた。
また、その時の衝動だけで子供が出来てしまい、結婚はしたものの、すぐ別れたり。
クビドが吟味して相手を選ぶ前に、体だけの関係を結ぶ者が増え、性にかかわる病気も蔓延した。
だから、クビドにしたら、矢を射たくても、射る事が出来ない状況が続いたわけだ」
リオールは黙って聞いていたが、やがてポツリとつぶやいた。
「人の心が見えたり、その人達を幸せにするのは、難しい仕事なんだな。
クビドはずっと一人で、それを背負ってきたのか」
リオールは、ふとクビドに会いたくなった。同じ波動の対の天使に。
「トンニャン!トンニャンなのね?嬉しい。久しぶり~!!」
リオールの城に着くと、待っていたようにコーラがトンニャンに飛びついていて、しっかりと抱きついた。
「・・・トンニャンがコーラの親友だとわかっていなかったら、殴ってるところだな」
いつまでも抱きついて離れないコーラに、リオールは少々嫉妬心を覚えた。
「人間のハイスクール時代を供に経験した仲間だぞ。久しぶりに会ったら、嬉しいに決まってる。積もる話もあるだろう。
それに、トンニャンが少女として人間界に現れた時だ。
女同士の友情なんだから、嫉妬するような事じゃないだろう」
アシュラはリオールをバルコニーに連れ出して、コーラとトンニャンを二人きりにしてやった。
「アシュラはトンニャンが他の女をああやって抱きしめたり、仲良く言葉を交わしても、嫉妬しないのか?」
「状況にもよるな。今日の場合はセーフ。もともと友達なんだ。しかも女同士の。嫉妬する理由が無い」
「・・・変な事聞いていいか?俺の事、子供だって言ったよな?」
「大人じゃないとは言ったが」
「じゃあ、子供がわからないことは大人に聞いてもいいよな?」
アシュラは不思議そうに頷いた。
「前に父上が言っていた。
『トンニャンは男でもなく女でもなく、男でもあり女でもある。性を超越した存在。この世の生まれる前から存在し、この世が滅びた後も存在する』と」
「あぁ、俺もそう聞いている。
あいつは謎が多いが、俺には関係ないんだ。
今、こうして傍にいる、それだけでいいと思えるからな」
アシュラはバルコニーから地上の空を投影させた星空を見ながら、
つぶやくように、そう言った。
リオールは落ち着かない様子で、質問を言いかねていた。
「アシュラとトンニャンは、つまり・・・」
リオールは言葉が見つからず、さらに言いよどんでいる。
続く
ありがとうございましたm(__)m
トンニャン#9 悪魔皇太子リオール(クビドと対の天使)
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#10へ続く
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最初から#1は
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