トンニャン過去編#10 アン・バスカント(原題「鳳凰」)
※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
悪魔がネッドのいる水の塊に手をかざすと、ネッドが苦しみだした。
ネッド!!
トンニャンが両手を水の塊に向けた。
そしてそれを抱えるような仕草をした。
するとどうだろう。
水の塊がゆっくりとトンニャンに近づいてきた。
トンニャンが水の塊を両手に受け取ると、風船が割れるように水がはじけた。
ネッドの身体は、トンニャンのその細い腕に受け止められていた。
「そんな・・・。
悪魔が怯えたように震えた。
しかしそれはほんの一瞬であり、次の瞬間、彼は炎に包まれ灰も残さず消えていった。
悪魔の群れはまだ燃えていたが、トンニャンはネッドを寝かせるようにそっと地面に置くと、また両手をかざした。
その両の手を今度は交差させるように、何度か動かした。
両手の動きに合わせるように空間が揺らぎ、パックリと開いていた割れ目が少しずつ閉じていった。
すっかり割れ目が閉じ、雲の谷間から薄く月明かりが見えてきた。
もう悪魔の姿はどこにもない。
私は寝かされている生気のないネッドに駆け寄った。
「アン、ネッドは無事よ」
トンニャンがネッドを指差すと、その指からひとすじの光が放たれ、ネッドの顔がみるみる赤みを帯びてきた。
「これで安心ね」
「何が・・・起こったの?」
トンニャンはちょっと困った顔をした。
「見えるのね、アンは。
あれはね時空が捻じ曲がって魔界からはぐれ悪魔が人間界に出て来ようとしたの」
「はぐれ悪魔?」
「魔界は一人の王と四人の重臣が支配してるんだけど、それらのどれにも属さない者もいる。
彼らが、磁場の乱れにつけこんで、空間を捻じ曲げてきたのよ。
本来魔界の王達が取り締まるべきなんだけど、今回は間に合わないようだったから」
「あなたは・・・悪魔?」
「いいえ」
「では天使?」
「いいえ」
「あなたは誰?」
次の瞬間トンニャンの身体は炎に包まれ空に舞い上がった。
「あなたは鳳凰?フェニックス?」
遠くで彼女がささいやた。
「風・・・」
風?
「私は・・・トンニャン」
ネッドは助かった。
だが、彼は噴水に入った事しか覚えておらず、その後の記憶は全くなかった。
また、公園で人々が倒れた事も、原因不明のまま、詳しい調査報告もなされなかった。
でも、私は知っている。あの日起こった事を。
そしてトンニャン。不思議な少女。
彼女はいったいなんだったのか?
誰も信じてくれなくても、私は彼女に間違いなく会った。
彼女は今、何処でどうしているのだろうか。
アン・バスカント(原題「鳳凰」)終わり
ありがとうございましたm(__)m
オマケ
この作品は40年も前に子供だった私が作った話です。
2006年に再開し、書籍化した「阿修羅王」の中で、トンニャンは「わたしは歴史に介入できない。見ている事しかできないのだ」と言っています。
それを2006年当時に書きながら「え?そうだったの?昔描いたのって、歴史に介入したことにならないの?」と、私はあわてました。
子供が描いたものとはいえ、この話は、ガッツリ、歴史に介入している気がします(汗💦
トンニャン過去編#10 アン・バスカント(原題「鳳凰」)
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#11 トム・クワイエット(原題「ふしぎなコーラ」)へ続く
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