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かげろう奇譚Ⅱ #11

闇夜に見えし その月は 手が届くほど近くあり

届かぬほどに遠くあり 町をも覆う 朧月

某文章教室に入会したのは20世紀末の4月だった。
その3年前から いろいろな講座のある そのセンターの会員だったが、
いくつかの講座を経て 最後にたどりついたのは『書く』ということだった。
テン、マル、段落の基礎から勉強しなおそうと 
思い切って20年の月日を 飛び越える決心をした。

その日、もう長い間書いていなかった和美は、
不安にかられながら 初めて教室に足を踏み入れた。
笑顔の似合う優しそうな女の先生は、和美の母より少し若いくらいだろうか、
杜の都市を拠点として活躍する脚本家であった。

そして 年配の男性が二人、二十代風の女性が二人、
やはり年配の女性三人が 先生のまわりの長机に座っていた。和美は一番奥の開いている席に座り、皆さんの作品を読ませてもらった。

緊張のうちに2時間が過ぎ、先生から次のお題は「桜」と言われた。
この教室では毎回お題が出て、
そのテーマに添って何か自分なりの文章を書いて来るらしかった。

このテーマというものに 和美はかなり苦労した。
皆さんのように なかなか発想ができないのだ。
しかし、そうも言っていられない。
とにかく はずれた内容でも書くしかないと 腹をくくり
毎度 おかしな話を書いては 持って行った。

かげろう奇譚Ⅱ #12に続く

かげろう奇譚Ⅱ #11


最新作「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ


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