
トンニャン#14 愛の天使クビド(リオールと対の天使)
※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「クビドの巻」のような意味。話の位置は、前回の「リオールの巻」の続きです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。
また、#14・#15は、軽くBL表現があります。苦手な方はスルーしてくださいませm(__)m
驚いているのはクビドばかりではない。
チェリーもコーラもアシュラも、あまりの衝撃に声も出ないでいる。
「大丈夫か?リオール。
突然、聞こえないものが聞こえ、見えないものが見えているはずだ」
トンニャンが言うのとほぼ同時に、リオールが耳を押さえて、座り込んだ。クビドは、すぐに走り寄った。
そして、リオールの手を取ると、リオールは耳を押さえるのをやめ、顔を上げた。
「大丈夫、力はわたしが押さえている。普段は、全てを解放しているわけではないのだ。
その時々によって、力を加減している。初めてでは、力の加減は無理だ。
この手を離さない限り、わたしが押さえているから、大丈夫」
「クビド、なのか?」
クビドは微笑みながら頷いた。
「この気持ちは何だろう。
俺にはたくさんの兄弟がいて、血の繫がった身内はたくさんいるのに。
こんなに近しく感じるなんて、初めてだ」
「わたし達が対の天使だからなのだよ」
クビドとリオールが立ち上がると、トンニャンが用意した大きな姿見が、二人の姿を写し出した。
そこには、全く同じ顔、同じ姿をした光輝く天使が手を取り合って立っていた。
「本当に、そっくりだ。鏡で見ると、どちらが自分なのか、わからない」
クビドも、リオールも自分達の姿に感嘆した。
「嘘・・・こんなに似ていたの?どうして今まで気づかなかったのかしら?」
コーラは座り込んだままだ。
「本当ね、双子のようだわ。私もここまで似ているとは思わなかった」
微笑みながら二人を見ているチェリーに、トンニャンがゆっくり近づいてくるのが見えた。
「隣にもう一つ球体を作ってある。
とりあえず、一度そちらに移ろう。
クビドもリオールも混乱してるだろうが、クビドの方は、まだ冷静に受け止めている。二人きりにしても大丈夫だろう。
対の天使が初めて会ったんだ。少しの間、遠慮した方がいい」
クビドが振り向くと、皆どこかに行ってしまっていなかった。
「わたし達の為に、時間を作ってくれたようだ」
「クビド、悪魔と対の天使だなんて、迷惑じゃないのか?」
クビドはそっとリオールの額に口づけをした。
「クビド?」
「今のわたしは喜びでいっぱいだ。
きっとミカエル様もルシファーといた時、こんな感覚だったのではないだろうか」
リオールは震える手で、クビドの顔をなぞった。
「本当に、すべて同じなんだな。こんな事が本当にあるなんて・・・。
こうして、クビドを目の前にしていても、まだ信じられない。
でも喜びが湧きあがってくるのを止められない」
今度はクビドがリオールの顔をなぞった。
「リオール、きみにふれられている時、気を失いそうだったよ。
自分を見ているのと同じなのに、きみの美しさに震えるほど酔っている」
「同じ気持ちだ、クビド。この世にこれほど美しいものがあったのか、本当に今にも気を失いそうだ」
リオールは、クビドの指が自分の唇にふれた時、思わずそれを噛んだ。
それからは、もう止められなかった。
美しい二つの彫刻は一つの影となり、出合えなかった長き時を埋め尽くすように、揺れる波間に身を任せていった。
続く
ありがとうございましたm(__)m
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