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元祖 巴の龍#52
西燕山は、北の北燕山、南の南燕山と山脈を連ねて連峰を成していた。
かつて大悟が、父・丈之介と隠れ住んでいたのが北燕山で、菊之介と大悟がサライに行く時に越えた山であった。
狼はその北燕山からこの西燕山に流れて来たのだろう。
そして、今では群れの頭目になるほど立派に成長したのだ。
山中にはしばしば滝があった。
この国には北に樹林川、南に邪虚川という大きな川があるが、その他にも名も知られていない小さな川も数多くある。
それらの水源として、大小様々な滝があるのだ。
もちろん旅行く者にとって、滝も川も貴重な存在だった。
とある滝にたどり着いた時のこと。
菊之介はずいぶん体を洗っていないことを、とても気にしていた。
大悟なぞ、何日体を拭かずとも平気なのだが、菊之介はお姫様育ち、汗をかいただけで体を拭きたい、洗いたくて仕方がないのだ。
「兄上、ちょうど良い滝に巡り合いました。水を浴びます」
菊之介が着物を脱ごうとすると、大悟が慌てて止めた。
「おまえは何を考えているのだ。今はもう冬ぞ。もう何度も雪を見たではないか。
いくら新城より南に来たとはいえ、山は里より雪が多い。
今日もまた雪が降るぞ。
そのうち、温泉でも見つかることもあろう。
それまでは、水を浴びるなど、死にに行くようなものだ」
「大げさな。温泉などいつ出逢えるかわからないではありませぬか。
ちょっと体を洗うだけです」
菊之介は大悟が止めるのも聞かず、全裸になって滝に入って行った。
思いのほか水は冷たく、入った途端に身震いがし鳥肌が立った。
それでも菊之介は体を洗い始めた。
「菊之介、早く上がるのだ。風邪をひくだけではすまんぞ」
大悟は気が気ではない。
「大丈夫ですって。もうすぐ上がります」
菊之介もさすがに体が冷えるのを感じていた。急いで上がらねば・・・。
そう思った時、突然滝の周りだけ霧に包まれた。
「菊之介!」
尋常ではない状況に、大悟は思わず叫んだ。
菊之介の姿が、霧に隠れて見えなくなってゆく。
そしてその霧の中に、煙のような雲が現れて、その上にあたかも仙人のような人が立っていた。
続く
ありがとうございましたm(__)m
※ちなみにこれまでも、これからも、妖怪達は、江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕の妖怪画集から、調べたものです。(ゲゲゲの鬼太郎のファンですから(´艸`*)
「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ
次回 元祖 巴の龍#53はこちらから
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