マガジンのカバー画像

ちょっとシリーズ

59
ショートショート。ちょっとファンタジィ、ちょっとSF、ちょっとBL、ちょっと不条理。「地球が滅びる前に」3話収録。魔女の島 4話
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

告白 (掌説・物語)

ぼんやりとした薄明かりの中 けだるい想いに侵されたまま ふと左腕をのばし シーツをめくる。 「帰るのか?」 あなたの声。 帰るわ。 「出張、だったよな?」 でも 家は 空けられない。 あなたは起き上がり ベッド脇のルームランプをともして タバコに火をつける。 「夕べ だんなと・・・」 あなたの口を 私は自らの唇でふさぐ。 そうよ。だって 私は妻だもの。 夫の出張前には 浮気防止に 抱かれるのは あたりまえ。 「別れたいって、あれほど言ってたくせに」 そう

夢の中では

ボクは自由 束縛するものも いない お腹もすかないし 好きな時に寝て 好きな時に起きる ボクをいじめる イジメっ子だって ボクのいいなりさ ボクは ボクの夢の王様 何でもかなう ね キミもおいでよ ボクの夢の世界 「笑ってるわ、楽しい夢を見てるのね。」 「・・・もう 何年かしら?あれから・・・。」 ボクの時が止まってから どのくらいかなんて ボクは 知らないよ! 090601(月)by鳳龍 あすか

この物語はフィクションです

オレ、ガンなんだ もう・・・末期 入院した時、覚悟したよ いい先生に出逢って、なんとか復帰したけど 治ったわけじゃない 今度、ガンが悪さ始めたら、もう無理だって だから、キミとは結婚できない 結婚したら、オレの最期を、キミに看取ってもらうことになる そんなこと、キミにさせられない だから、別れる・・・ キミには、ほんとうのことを言えなかった オレのことなんか忘れて、幸せになってほしいから キミを傷つけたね ごめん せめて、キミが一生、困らないくらいの慰謝料を贈るよ それし

あの日にこんな夢を見る私は不謹慎でしょうか

「すみません。1月17日、休日出勤の話、良いって言ってたんですが・・・。実は結婚記念日でして・・・10年目なんですよ」 机ひとつ離れて、若い中間管理職の声が聞こえた。 1月17日。あの日、阪神大震災の日だ。そして、折しも某TV局の朝ドラでも話題となっていた TVの話は、ちょうど、阪神大震災を体験した方々が、東北の3.11の映像を見て、何かできないかと奮闘していた。 彼の結婚記念日は10年目、阪神大震災は30年目。 そして3.11.直下型と、海からやって来た黒い恐怖。

月(ライト)前編

月があまりに明るくて、眠れそうにない晩だった。 わたしは丸窓に顔をつけて、じっと月を見つめていたが、その月に照らされた一輪の花が目に入った。キーボードで検索すると、月夜に開くいくつかの花が画面上に現れたが、どの花かよくわからない。 “月がとっても青いから遠回りして帰ろ” 聞いた事もない歌の詩が現れたが、ふむ、それって今夜のような月かもしれない。 “待てどくらせど来ぬ人の宵待ち草のやるせなさ 今宵は月もでぬそうな“ 月が出ない唄ではどうしようもない。 「何をしてい

月(ライト)後編

ふっと笑うと首をふって、 「疲れてるんじゃないか。さ、出発するぞ。」 と言った。 わたし達はそのまま地上を離れ、美しい月の間近を通り、そのまま太陽系から離れて行った。やがて遠くで、一つの星に光が走った。 「今回の任務は上々だったな。」 彼が、ポンとわたしの肩を叩いた。 あの花は、星ひとつを消してしまうほどの威力を持つバクダン。わたし達は、その星の生態系に合わせて星の住人に気づかれない形のバクダンを作り、その星を消してゆく掃除屋。消すといっても、爆発して消えてしまう

地球が滅びる前に #1

KAGYOのカサイから緊急連絡があった。 地球防衛軍司令部から、大規模流星群急接近のため、ついに地球が破壊されることがわかった。 しかし、現時点で地球人すべてを助ける術もなく、防衛軍本部はパニックを恐れ、世界への発表はせず、最後の時を静かに迎えることになったと。   私が地球防衛軍の隊員になったのは、数年前の事だ。 スーパーのパートの帰り、世界的スーパーアイドル・KAGYOのカサイが突然現れ、私が民間の隊員に選ばれた、と告げたのだ。 ランダムに選ばれる隊員は多く、その時に必

地球が滅びる前に #2

私には息子と娘がいる。 それぞれが家庭を持ち、子どもが二人ずついる。 私は夫と子供達その家族の分のチケットを希望した。 息子と娘に連絡し、コンサートに来るようにとチケットを送った。 娘は喜んでチケットを受け取った。 仕事をやり繰りして、なんとか家族で行くようにする、と連絡があった。 いつも娘は私の申し出を快く受けてくれる。 息子は当日の昼間に子どもの学校行事があって、と迷惑そうに言ってきた。いつものことだ。嫁がまた何か言っているに違いない。 離れて暮らしている私と夫が、た

地球が滅びる前に #3

地球最後の日。  「クリムラ。一般の隊員の中で、大半が処罰されたって?」  「あぁ、黙ってられなくて話した者はもちろん、国外逃亡を企てた者、 ロケットを盗もうとした者、パニックを起こしてネット拡散しようとした者・・・。 あぶりだされた、隊員にふさわしくない者がごまんと捕まった」  「初めから国民からランダムに選んだりするからだよ。 国外逃亡を企てた者、なんて、どうするつもりだったんだ?」  「日本以外なら、ロケットで逃げられる、と思ったんじゃないか」 「それにしても、

チカちゃんのおさんぽ(ちょっとファンタジィ①)

チカちゃんが 歩いている 大きな原っぱが 広がってる チカちゃんが 走っている たくさんのお花が咲いている チカちゃんが 立ち止まる チョウチョウが ひらりひらり チカちゃんが ふりむく あれ? 手が 手が半分 なくなってる チカちゃんは あわてて 手をひっこめる 手があった なくなったのは どうして? よくよく見ると 空間に 穴があいている そこの ちょっと指をいれてみる やっぱり消えた! 「誰だ?ひとの家に 指を突っ込むのは!」 チカちゃ

よっちゃんのたからもの(ちょっとファンタジィ②)

よっちゃんは まだ5才 ママと幼稚園に行くよ せんせい おはようございます りゅうちゃん おはよ! さやちゃん おはよ! みんな あそぼ! すべりだい じゅんばん じゅんばん けいちゃん よこはいり だめだよ しゅうちゃん ひとりで なにしてるの? しゅうちゃんも あそぼうよ は~~~い おべんとう ママの おべんとう だいすきな たまご焼き だいすきな ハンバーグ でも ちょっぴりニガテ トマトとレタス わ~~~い おかえりだ せんせい

えっちゃん ほ~~い!(ちょっとファンタジィ③)

えっちゃん 幼稚園 帰り道 ママといっしょに あるいてく ときどき とまって きれいなお花 ときどき つかれて おおきな 葉っぱ 葉っぱから おみずが出ているよ みどりの色は あまがえる あまがえる お池の 近くの あまがえる けろけろ けろろ けろけろ けろろ あれあれ かえるが あつまって みんなで お歌を けろけろろ けろけろろ えっちゃん そろそろ 帰りましょ ママがよんでる またこんど かえるさん さよなら ばいばいね

きょこちゃんのお城(ちょっとファンタジィ④)

おやすみ ママ 今日もおつかれ きょこちゃん いっぱい いっぱい あそんだもん とんとん とんとん あなたは だあれ きょこちゃんは 夢の中 とんとん とんとん おねむの きょこちゃん こすって ひらいた おねむの眼 こんにちは きょこちゃん わたしは おひめさま おうじさまを さがしているの 星のかなたにいる おうじさま いっしょに さがしてくださいな 星まで なにでいくの? この舟でいくのよ おひめさまが舟と言ったのは 大きな大きな お城

ひかる(ちょっとファンタジィ⑤)

キラキラひかる ひかるは お水 お水は 葉っぱで みどりにひかる 雨がふった後 おうちのまわりもピッカピカ お水でひかる 夜は くらい くらいは こわい こわいけど ひかる ひかるは おつきさま まるいまあるい おつきさま お星さま きらり きらりと ひかる お星さまほしい きれいに ひかる お星さまの石 きれいな 小石 小石は ひかる お水で ひかる ひかるお庭 雨上がりの お庭 ひかる小石 小石は まあるい おつきさま ひかる(