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すぐれた「比喩」をつくれるようになるためには? ―微細な感情の記憶を日々インプットすること
「文章術」に関する本にはかならずといっても「大切だ」とされていることがあります。それは「比喩」をつかうことです。ほかのものに例えて表現することが、読者の理解を助けるということが書かれています。
たとえば、「飛躍的な成長を遂げるAI」と書くよりも、「ロケットが飛び立つような成長を遂げるAI」と書いたほうが、その成長の勢いが感じられます。
しかし、力の限り頭をひねっても、読者の想像力を掻き立てるような比喩はなかなか思いつきません。固くしまったジャムの蓋を開けるときのような困難が伴います(この文のように)。
そこで、今日もChatGPTの登場です。ChatGPTを使って、すぐれた比喩をつくる方法を紹介します。
参考にしたのは『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(古賀史健、ダイヤモンド社)で解説されていた比喩の作り方です。
比喩を考えるにあたっての次の3つの注意点を挙げられています。
具体的・映像的であること
普遍的・一般的であること
遠距離であること(意外性があること)
比喩のおもしろさは特に、「3. 意外性があること」が重要だと述べています。
たとえば、「亀のような歩み」や「光のような速さ」はありきたりな比喩です。こうした比喩をありきたりにしている理由は、鈍足のたとえとしての亀は、あまりにも馴染み深く意外性がないからです。もっと「遠くにあるもの」を持ってこないと比喩はおもしろくなりません。
逆にいうと、「遠くにあるもの」を思いつくことができれば、おもしろい比喩になるということです。そこで、このプロセスをChatGPTに手伝ってもらうことで、おもしろい比喩をつくれないでしょうか。
さっそく試してみましょう。
遅い歩みを表す比喩を「亀のような歩み」からはじめて、遠くへ転がしていきながら比喩をつくってもらいましょう。
#条件を満たすように#手順に従って#入力に関する「比喩」を作成してください。
#条件
1. 具体的・映像的であること
2. 普遍的・一般的であること
3. 意外性があること
#手順
#入力で与えられる比喩からはじめ近くの比喩を遠くに転がしながら、#条件を満たす比喩を作成してください。
#例:
無表情を表す比喩:
能面のような表情 → 仏像のような表情
→奈良の大仏のような表情→モアイ像のような表情
→風化した石像のような表情→苔の生えた石像のような表情
→墓石のような表情
#入力
遅い歩みを表す比喩:
亀のような歩み→
こちらが結果です。
亀のような歩み → 溶けかかった蝋燭の滴り落ちる様子 → ねばねばした泥に足を取られるような歩み → 夢の中で逃げるが進めないような歩み → 遥か彼方の地平線へ向かう夕日の沈むような歩み → 時の砂がゆっくりと落ちる砂時計のような歩み
最終的な比喩は「時の砂がゆっくりと落ちる砂時計のような歩み」となりました。「砂時計」はたしかに砂の落ちる様子をみていると、ゆっくりと時が流れるように感じるため悪くは無い比喩ですが、それほど「遠くにあるもの」という感じはしません。
それよりも、途中に出てきた「ねばねばした泥に足を取られるような歩み」や「夢の中で逃げるが進めないような歩み 」といった表現は、その感覚を実際に呼び覚まされ、なかなか進まない光景を映像的に思い浮かべることができるすぐれた比喩です。
ですが、「意外性」がそれほどあるか?と言われるとそうでもありません。意外性もありつつ、一般性もあり、普遍性もある。たとえば、総毛立つほど気持ち悪い感覚のたとえとして、「生きたミミズを飲み込んだような気分」という比喩が『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』の中では紹介されています。
こうしたすぐれた比喩(感覚的比喩と呼ばれています)を作るにはどうしたらいいのでしょうか?
そこには「感情の記憶」を日々インプットすること、と本の中では述べられています。
微細な感情の記憶を日々インプットする。それだけだ。
(略)
インターネットやスマートデバイスの普及によって、記憶力の価値は大幅に減退した。大化の改新は何年だったのか、浄土宗の開祖は誰なのか、円の面積を求める公式はどういうものかも、検索すれば出てくる。
しかし、「感情の記憶」は別だ。これだけは本から学ぶことも、検索することもかなわない。あなたという人間が、日々をどれだけ真剣に生きているかが問われる領域だ。取材者の意識をもって、「生活者としてのわたし」の微細な感情を観察し、記憶していくようにしよう。
すぐれた感覚的比喩を作るためには、日々の生活の中での感覚を磨き、それを感情と共に記憶することが必要となるようです。ChatGPTは、感情は備わっていませんし、何かを経験するということもできません。この違いが今のところ人間とChatGPTを分けていることでもあります。
でも、ChatGPTを搭載したロボットを作るとどうでしょうか?そうすれば、ロボットのセンサーを通じて入力される「感覚」と「感情」を繋げるように学習することも可能かもしれません。ロボットにいろいろな経験をさせて、感情との結びつきを対話しながら磨いていく。この学習に時間をかければ、ひょっとしたらすぐれた感覚的比喩を作り出すChatGPTが登場してくるかもしれません。でも、それって子供が育っていく様子ともはや近いかもしれませんね。
それでは、また!ciao.