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データサイエンスとALIFEの関わり&オススメの教材

みなさん、こんにちは。岡瑞起です。

9月も終わりに近づいてきましたが、みなさんいかがお過ごしですか?
私が勤めている筑波大学でも来週から秋学期が始まります。秋学期、私が担当するのは「データサイエンス」と「人工生命概論」という授業です。

筑波大では2019年度から全学の1年生を対象に必修科目としてデータサイエンスを開講しています。筑波大には、人文・文化、社会・国際、生命環境、理工、さらには、体育、芸術まで多岐に渡る分野があります。これら全ての一年生にデータサイエンスを「必修」とするというのは、大学としてもなかなか大きな決断だったのだろうなと思います。

でも、全ての学生がデータサイエンスを学ぶというのは、それはそれで大変なことです。「自分の分野とどのように関係しているのかな?」「なんで学ぶ必要あるのだろう?」と疑問に思う人も多いはずです。そんな人に少しでもデータサイエンスを学ぶモチベーションを高めてもらえたらという思いを込めて、なぜ、「データに基づく判断や意思決定を適切に行えるようになることが全ての人にとって重要なのか」を理解してもらうための動画を用意しています。

これらの動画は次の筑波大学のオープンコースウェア(OCW)サイトで公開されていて、誰でもみることができます。

いろいろな専門領域におけるデータを活用した研究と共に、データの活用がどのような成果につながっているかが紹介されています。

たとえば、心理学を専門とする松田壮一郎先生の動画では、心理学とデータサイエンスの関係性がとても分かりやすく解説されています。松田先生によると心理学とは、「共感、感情、痛みなどの心的現象というものを科学的、客観的な方法で探求する」学問です。心的現象を科学的、客観的に測るときに必要なのが統計やデータサイエンスというわけです。どうやって「心」を測るのか、その結果からどんなことが分かるのか?に興味がある方はぜひ、松田先生の動画をご覧ください。もし私が高校生の頃に、データに基づく心理学という分野を知っていたら、ひょっとしたらこの分野に進んでいたかもしれないな、と感じるほど本当に面白い分野です。

さて、私の専門分野である「ALIFE(人工生命)」でももちろんデータサイエンスは重要です。物理や化学、生物、あるいは心理学といった「古典」のサイエンスと少し違うのは、分析するデータが自然や人間が作り出すデータだけではないという点です。

たとえば、私がよく扱うのは、コンピュータシミュレーションが作りだすデータです。たとえば、ALIFEの有名なモデルに「鳥の群れのような集団行動」を作り出す「ボイドモデル」がありますが、これもシミュレーションが作り出すデータです。このデータを解析して、実際の鳥の挙動をどれほど再現できているのかといったことを検証します。

▼ Craig Reynoldsが提案した「ボイドモデル」

同じモデルを使って、東京大学の池上研究室によって数十万の鳥(エージェント)のシミュレーションも行われています。

▼池上研究室による大規模ボイドモデルとその分析に関する論文

シミュレーションが作り出すデータを解析することによって、たとえば、群れの数が大きくなることで初めて見られる複雑な運動を創発することが発見されています。このようにALIFEの強みは、現実世界における実際のデータとの比較だけにとどまらず、モデル自体を探求することで未知の現象の理解をもたらすことにもあります。

ということで、「学びの秋」とも言いますし、何か新しいことを学ぼうかな?と思っている人は、ぜひデータサイエンスをオススメします。学校に通う以外にも、学ぶための教材はさまざまに用意されています。

たとえば、筑波大学も参加している「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」では、データサイエンスを学ぶため教材がフリーで公開されています。

関連してプログラミングも学んでみたいという人のためには、ハーバード大学の「CS50's Introduction to Computer Sciece」 というコースがオススメです。

▼ハーバード大のコンピュータサイエンス入門講座 on edX

日本語に翻訳するプロジェクトも立ち上がっているようで、YouTubeの字幕で「日本語」を選択すると、日本語字幕付きで動画を視聴できるようになっています。

▼日本語翻訳プロジェクト

ということで、今回はデータサイエンスとALIFEの関わり、そして、オススメの教材についてでした。最後まで読んでくださりありがとうございました。


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