ブラジルのBlack Lives Matter 「リオのカーニバル」 : Salgueiro2019 法の支配
世界最大級のお祭り・リオのカーニバル。本質は「民衆蜂起」。メッセージ性に富んだパレードが繰り広げられます。今回ご紹介するのは、名門サンバチームSalgueiroが2019年に披露したテーマ。そのテーマとは?
■法の支配
西アフリカ・ヨルバ人の国オヨ(1400-1835)の第4代国王。雷や火、風を司り、欺罔や搾取、不正を働く者に天罰を下す怒れる正義の神。ブラジルではウンバンダやカンドンブレの神として信仰されている。Salgueiroの守護神。
《ヨルバの神がブラジルで信仰されている理由》
15-19世紀ヨルバ人が奴隷として連行されてきたからです。1,500,000名以上の人間がブラジルで取引されました。多くの人々が北東部のサトウキビのプランテーションで使役されました。(後に綿花とコーヒー)
《奴隷制の廃止(1888)》
ヨルバ系住民は「自由を与えられました」。
とはいえ身体だけが唯一の資本。「持たざる者は労働」しなければなりません。
しかし、貧しいブラジル北東部、稼げる仕事は希少でした。
仕事にあぶれた彼らはどうしたのでしょうか?
首都リオに移住しました(当時)。
それも大規模に。
1872年 27万人
↓
1890年 52万人
↓
1900年 81万人
約30年で人口3倍で住居不足。
公共住宅を建設したり、と今のような社会保障はありません。
屋根を得られなかった人々はどうしたのでしょうか?
自分たちで「家」を建てました。
しかし土地も建材も持っていません。
「廃材を使ったバラック」が山の斜面に立ち並びました。これが現在リオに600箇所はあると言われるファヴェーラ(スラム)の原型です。
移住先のリオで成功できたのでしょうか?
「ファヴェーラに生まれたらそこから抜け出せない」
仕事は得られた。けど食べるので精一杯...
消費だけで投資ができない...
子の「高等教育」ができない...
「貧困の再生産」
こうして貧困は再生産されてきました。
100年以上にわたり。
「貧困では自由になれない」
ブラジルは憲法で国民の基本的人権を保障しています。
ブラジルは超・格差社会です。
利権をめぐる汚職が横行しているともいわれます(人の支配)。大統領ですら罷免されてきました。リオでは現職の市議が何者かに銃撃・殺害される事件も起きています。犯人(依頼主)は捕まりません。警察が健全に機能していないと言われています(民主政への脅威)。
いかなる権力も法の支配に服せば貧困は解消され、公平な社会が実現されるでしょうか。ユートピアを実現するために我々は常に「法」を模索していかねばならないでしょう。
■ファヴェーラに生まれて
ファヴェーラを出て外の街へ行ってみる。裕福そうな人たちが優雅に歩いている。身なりも顔色も良くて健康そう。ああ彼らの視線が痛い。どうして彼らには余裕があって、自分にはないのだろう?お金が欲しい。彼らのように目立ちたい、賞賛されたい。でもどうやったらお金が手に入る?わからない...
いかがわしい商売に手を染めてしまう多くの少年少女たち。
お金は手に入る。でもそのお金を使っても満たされない。心は乾くばかり...
なぜ?
お金の本質は誰かを幸せにした対価。
誰も幸せにしない商売で得たお金で、自由は全く得られない「所詮は泡銭」ファヴェーラ負の側面。
■サンバの果たす役割
サンバはファヴェーラにさす光のようなもの。身一つでできるサンバ。成功すれば経済的に報われ、世界から賞賛されるサンバ。自由の象徴。リオのカーニバルがその最たる例。カーニバルが生み出す経済効果は1000億円、集客人数は150万人以上とも。毎年あって、リオ住民の日常にして晴れの舞台。
エスコーラ(学校)と呼ばれるサンバチーム。
子どもを心底大事にします。貧困を繰り返さないために「子どもは未来」ファヴェーラ正の側面。
▼歌詞
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▼パレードはこちら
▼貧困を自ら断ち切る方法はこちら
▼Salgueiro過去のパレードはこちら
▼参考
・カルナヴァレスコのインタビュー
・テーマ概要
・パレード写真集
(おわり)
▼参考記事:リオデジャネイロ市議暗殺事件
・元軍警官2名が逮捕された:AFP通信①
・現職のブラジル大統領ボルソナロとの関連性は?:AFP通信②
・被害者を追悼したMangueira2019年のパレード:AFP通信③
・軍警特殊部隊の元隊長「口封じで射殺」の疑念:AFP通信④
・ファヴェーラと軍警の流れ弾:AFP通信⑤
・スラム街ツアーの事故:AFP通信⑥
軍警は公共秩序の維持を目的に設立されている州の警察組織。州知事の指揮命令下。特殊部隊は映画化も。『エリート・スクワッド』(Amazon Prime)
州知事は、州の有権者による直接選挙。四年任期。
州政府は、原則として、公共の秩序に対する重大な危険がある場合などを除き、連邦・市に対して自立した組織。