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奴隷制とブラジル・日本移民

国連・奴隷制度廃止国際デー(12月2日)を前にまとめます。「奴隷制はあまり関係がない遠い話」と思っていましたが意外と身近でした。

搾取されないために。
知っておいて損は無い話です。

◇◆◇

1888年のブラジルを最後
奴隷制は違法となりました。

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プランテーションの代表例:サトウキビ畑
Image:Hồ Ngọc Hải  on unsplash

なぜ奴隷制は違法になったのでしょうか?

人間の良心が許さなかった」
自由な社会を実現するため」

現在のわれわれが共有する人権感覚
しかし単なる後付けかもしれません。

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「人間は生まれながらにして自由である」(ルソー)
Image:Markus Spiske on unsplash

奴隷制が廃止された理由とは?

きっかけはインフレが進んだ19世紀初頭
英国資本家たちの闘争。

労働者の賃上げ要求に悩んだ工場経営者 
        
VS
植民地のサトウキビ農園経営者(奴隷主)

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当時好まれた朝食:砂糖をたっぷり入れた紅茶
Image:Robert Anderson on unsplash

「砂糖の値段を下げたい」

工場経営者たちが議会に対してロビー活動。
それが功を奏し、英国の奴隷制は廃止に。

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旧都リオデジャネイロ
Image:Shot by Cerqueira on unsplash

1822年ブラジルはポルトガルから独立し
英国に従属する国となりました。

修道院も奴隷を使役するほど
奴隷制に依存していたブラジル。

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米国のリンカーン大統領「奴隷解放宣言」(1862)
Image:ElevenPhotographs on unsplash

単に奴隷制をやめようという世界的な風潮
はありました。
が同時に経済的な理由も。

「奴隷を使うよりも移民を雇用するほうが
生産性が高いという認識」
(増田2000. pp.294-295)

1888年、ブラジルの奴隷制は廃止されました。

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プランテーションの代表例:コーヒー豆
Image:Anastasiia Chepinska on unsplash

奴隷が去り労働力が不足したプランテーション。補ったのは日本などからの「出稼ぎ民」でした。

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「ブラジルで農業をする」

「とにかく労働者がほしい」サンパウロ州は
日本からの渡航費を半分負担したほどです。

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サンパウロ日系移民資料館にて撮影

ブラジルを「舞楽而留(楽しく舞い留まる)」「コーヒーは金を稼げる」と喧伝した起業家。

【モデルケース】
一日の収入目安(一人当たり):
1円20銭〜1円50銭
内訳:
コーヒー袋1つ(約50リットル)の労賃が30銭。一人で一日平均5-6袋の収穫見込み。
生活費が30銭。

丸山(2010)
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「移民契約書」(サンパウロ日系移民資料館)
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第一回渡航船「笠戸丸」
Image:Wikipedia

1908年、781人の契約労働移民が渡伯。
多くは数年だけ滞在するつもりだったそう。
大人一人あたりの渡航費用は約130円でした。

1円:現在の約4,000円
(基準:小学校教員の初任給50円)

MUFG「お金の、育て方」
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夫婦で渡航すれば約100万円の投資
Image:Markus Spiske on unsplash
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「ブラジルに出稼ぎして日本で錦を飾りたい」
Image:Masaaki Komori on unsplash

はたして投資は回収できたのでしょうか?

「借金はかさむ一方」

奴隷のような厳しい住環境に過酷な労働
コーヒー価格の不況。異なる風土。不作。
過剰供給による薄利。日用品の法外な価格
(搾取の構造:販売元は農場主の関係者)

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カール・マルクス
Image:Hennie Stander on unsplash

複合的な理由から農場を後にする日本人
後を絶ちませんでした。
とはいえ
「稼がず日本に帰るわけにいかない」

コーヒー農場 
 →鉄道敷設の作業員
 →スモールビジネス

◇◆◇

ブラジルに日本人が渡った約80年後
ブラジルから日本への「移民」が起こりました。

【在日ブラジル国籍者数】
1990年   →   2007年
56,429 名 →   316,967 名

出典:法務省在留外国人統計

物価高なのに所得が増えないブラジル。

「日本にデカセギ、ブラジルで起業(進学)

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サンパウロ市リベルダージ地区でデカセギに勧誘された

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デカセギから30年目、2020年。

【在日ブラジル国籍者数】
2020年12月末 208,538 名

出典:法務省在留外国人統計

「今さらブラジルには帰れない」という人たち

◇◆◇

今から約200年前
賃上げを嫌った起業家たちが
奴隷制を廃止に追いやりました。

「油や小麦粉の値段が上がった」

物価が上がっても所得は増えない現代日本。

我々が歴史から学べることは何でしょうか?

▼参考文献
増田義郎・編著『ラテン・アメリカ史 II』山川出版社, 2000. 
丸山浩明・編著『ブラジル日本移民百年の軌跡』明石書店, 2010.
国立国会図書館「ブラジル移民の100年」

(おわり)

表紙:Tim Mossholder on unsplash

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