「ひとりよりふたりで」 暖かい部屋。おしゃれな照明。素敵な音楽。そして、美味しい匂い。 「もうご飯できるよ」という彼の言葉を合図に私は動き出す。2人分の食器を用意し、お互いのコップに水を注ぐ。土鍋で炊いたご飯の粒を潰さないように慎重によそう。 彼と作ったご飯を食卓に並べ、程よい距離感でソファーに横並びに座る。ひとりで食べるには大きすぎるテーブルも2人だとちょうどいい。彼が好きな芸人さんのYouTubeをつける。行儀が悪いのなんの言われるかもしれないがこれが私たちの食卓。 2
「それではまた来週がない日」 2024.4.20。1年ぶりの眠れる土曜日。 明日は早起きだから早く寝るぞと意気込み、ふかふかの布団に潜り込む。キャンドルライトの光がなんとも心地よい。明日寝坊しませんようにと願いながら目を閉じる。 だけど心はざわざわ、落ち着かない。 なんとなく、25:30まで起きてしまった。 さて。 何の気なしにRadiotalkを開く、手癖で。 「オレたち!」と元気な声、煩い。 こんなに煩いと眠れないとわかっているのに聴くことに決めたから枕元にスマホ
「人生ダメにしてから始まり」 執着しちゃだめなんて誰も教えてくれなかったけど、あなたに出会ったおかげで執着を知り、また捨て方を知りました。 いい匂いするねと褒めたら次に会った時にプレゼントしてくれたお揃いの香水。 貴方がロングがタイプだと言ったから伸ばし続けている髪の毛。 清楚な子が好きだと言ったから服を揃えたのに結局はボディタッチが多めな子に惹かれた貴方。 全部を抱えて生きるにはあまりに重すぎるから綺麗なとこだけつまんで食べちゃうわね。 道路の向こうから喋ったこ
「で、それで、」 冬。人肌あれば暑くない夏。だけど私はずっと雪。湿気もなく乾いた雪、寒い砂漠。寂しさに押し殺されて気付いたら私は人形。 空になったら容器なんて邪魔なだけ。だけど私は既に空、既に邪魔。 熱帯魚、誘惑。負けない躰、勝てない頭。次から次へと出てくる、だからもうすぐ墓場。 道路に飛び出す私、とめない誰か。線香花火が頭で散った。とまる迷路。ぐちゃぐちゃになる人形。どこかに飛んでくビニール袋。 ぐちゃぐちゃを集めたらさらにぐちゃぐちゃになりました。と、誰かが吐い
人間とは愚かである。 浦島太郎はなぜ、あそこで玉手箱を開けてしまったのか。浦島は乙姫に魅せられていたので、そんな素敵な女性に貰ったお土産はたとえ開けるなと言われていても開けてしまうのであろう。 愚かである。 たとえどんなに好きな女性であれど、約束は守らねばならない。さもなくば浦島と同じく恐ろしいことになるのでは無いか。 例に出すと、浮気がそうだ。浮気をしないというのは約束では無い。相手との信頼を築くために大切な二人の間での法である。 浦島もまた乙姫に信頼されて玉手箱を預
「ぐちゅぐちゅきもきも」 2024年始まってから2日で幸せになり、2日で地獄に落ちた。 今日は躁状態なのでまだ言葉を紡ぐことが出来るが、昨日までは死んだように生きていた。誰とも関わりたくないし喋りたくもない。SNSも下書きに入れていたものを投稿するだけ。地獄。 何かを書きたかった。書こうとした。いつも傷口をぐちゅぐちゅに抉って思考を吐き出して、吐き出してスッキリしていたけど、出来ない。苦しい。何度も何度もリスカをしているような気分に襲われて過去を思い出すだけでトラウマが蘇
「好きだから力加減を間違えて壊してしまうこともあるわよね。」 10月の末。私はこの世から消えちゃおうかなと思っていた。もう全部どうでもいいやと思ってスマホを投げ出し、ベッドの上でいなくなる時のシミュレーションをしていた。 何時間が経ったかわからない。ふとスマホを見ると2件の不在着信があった。これに折り返し電話をしてから居なくなろうと思い、彼に電話をかけた。幸い彼はすぐに出た。しばらくたわいのない話をしていたが私はふいに「死ぬ時はちゃんと誰にも迷惑かけないで死ぬからね」と彼に
「女の子だからピンクが似合うって誰が決めたの」 あたしは女の子。 ピンクやフリルが似合いたい。ロリータを着てヘッドドレスつけて甘々にしてショートケーキも可愛く食べちゃうんだ。 だけど全然似合わない。女の子なら「当たり前」に似合うと思われてるものが似合わない。苦しい。 「女の子らしい」ってなに? そんな型に嵌められる人間なんて一人もいないの。「らしい」なんてありゃしないの。 甘いだけな女の子なんて居ないのよ。にがぁいチョコを隠してたり、カラメルを底に敷き詰めてるの。 で
「都会って 狭くって 星一つも見えないけど」 朝の5時。始発に飛び乗り集合場所へと急ぐ。 眠たい目を擦りながらすかすかの車両を観察する。通勤ラッシュと違って、香水や汗の香りを感じない代わりに少しアルコールの気配がする。始発はまだ夜が明けてない人と、既に朝を迎えている人とで朝と夜を両方感じられるお得な時間だ。私はこの空間がかなり好きだ。イヤホンから流れ出る心地よい音楽を聴きながら周りを観察する。異国の恋人達が座席を5個くらい使ってくっついていたり鍋を食べていたりと軽く異世界で
「わたしはぜったいにかわいい」 幼い頃、私の顔に関する意見で父と母は2つにわかれていた。父は「世界で1番可愛いよ」といういわゆる親バカで、母は「中の下、良くて中の中くらい。あんた言うほど可愛くないよ」と割と自分の娘でも客観的に見られる人だった。ここだけ聞くと母のことを酷い親だと思う人もいるかもしれないが、私はそのおかげで大人になって自分の顔がそんなに可愛くないことを理解し天狗にならずに済んでいるのでとても感謝している。 ただ、小学生の時は自分の顔が可愛くないとはとても思え
「やっぱり私表現者になりたい」 やっぱりとはどういうことか。 グラビアは表現者ではないのか。 そんなことは一旦全部ぶち投げて、私が「山下瑞季」として、「麻倉瑞季」として形成された経緯をここにつらつら書かせて欲しい。 【山邊鈴との出会い】 私が私とはなにかを考え始めたのは中学生の時に出会った彼女の影響が大きい。 彼女は自分の脳みそを外に出すことが得意で、彼女の書く文章は読んでいて惹き込まれる。 彼女が書いた文章で1番有名で世間を騒がせた(と私は思っているし事実テレビに