本が好きな人、本屋さんが好きな人に観て欲しい映画「本を綴る」
日本の素敵な書店に出会える映画「本を綴る」を観てきました。
作品の中に出てくる本屋さんは、全て実際に存在する場所です。
残念ながら閉店してしまったものの、今は子ども食堂という形で存在しているブックセンター、なんと観覧車のある本屋さん、本を待つ方のために、高松の離島も回る移動図書館など。
どの書店も、店主のこだわりと愛情が詰まった場所でした。
この映画は、日本の素敵な本屋さんを紹介する作品でもあり、人生に立ち止まっている人に向けて、そっと背中を押してくれる、そんな作品でした。
映画には、日本の美しい風景が映し出されていました。
主人公の哲弘が旅をする、那須、京都、香川。
青々とした木々が生い茂り、暖かな太陽の光が降り注ぐ森、
京都の廃線になった線路、
「天空の鳥居」と呼ばれる、香川の観音寺から見る街並みなど。
いわゆる観光スポットとなっている場所だけでなく、日本の、穏やかで暖かい、自然の空気感が伝わってきます。
Youtube「本を贈る」の映像で感じた温かみに加えて、本当に美しい日本の風景が広がっています。
そして、各地の本屋さんの取り組みを通して、本屋の在り方や存在意義のようなものが描かれています。
那須の図書館では、読み聞かせや、今その人におすすめの本を選ぶイベントを開催。
京都の、畳のある本屋さんは、放課後の子供たちの溜まり場になっている。
高松のバーでは、お酒を飲みつつ、本を通してお客さんとつながる。
本屋は、だれかの「居場所」。
そしてまた、本そのものにも居場所があって。
だから、私たちが本を手に取った時っていうのは、本屋さんが、まだ見ぬお客さんを想像して、最適な場所に置いてくれたからなのかな。
本との出会いって不思議なもので、「これ、まさに今の自分に必要な本だった」なんて感じることが少なくないけれど、それは、本屋さんが、本と、その本を必要としている人が出会う場所をつくってくれているからなんだね。
この映画を観て、今までは何となくだった、「私が本屋さんが好きな理由」が少し言語化できそう。
私はきっと、本屋さんと、本好きな方がつくり出す、穏やかな空間と時間が好き。
本を選んでいる時間や立ち読みする時間を、決して邪魔しない。そこにいる人みんなが、自分の時間も相手の時間も大切にしていて、店員さんの「ゆっくり見ていってくださいね~」っていう声掛けも、あたたかい。
あの空間は、本当に居心地が良いなと感じます。
そしてなんと、私が観に行った日は、脚本を書かれた千勝一凛さんが会場にいらっしゃって、色々とお話を聞かせていただくことができました。
千勝さんは元々役者さんであるにも関わらず、「役者だからこそ書ける脚本を」と、物語も書くようになったそうです。
しかも、この「本を綴る」では、脚本だけでなく、役者さんのキャスティングから衣装の着付けも行い、プロデューサーとして毎日撮影現場で諸々の作業をされていたとのこと。(多くの場合、脚本家さんは、脚本を渡したら、あとは監督やプロデューサーさんのお仕事なんだそう)
作品の中で、哲弘たちが食べていたおにぎりも、千勝さんたちが握ったんだとか!
ご自身で見つけた本屋さんに自ら足を運び、本屋さんたちの想いを直接聴いて、役者さんや現場のことをよく理解している千勝さんだからこそ、こんな素敵な作品になったんだなと感じました。
千勝さんが舞台上で仰っていた、この映画を通して伝えたいこと、「やればいいだけ」。
色んな言い訳をして、チャレンジすることから逃げてしまうことはあるけれど、それでも向かっていくことで、自分の居場所ができる。
過去を思い返して、ご自身に言い聞かせるように、静かに、力強く、仰っていました。
役者さんで、調理師免許も持っていて、着付けの先生でもあって、脚本まで書けてしまうなんて、何でもできてしまう方に見えるけれど、それは、ひとつずつ着実に目の前のことに一生懸命向き合ってきた結果なんだなと思いました。
「一般人の自分だからこそできた」という言葉が印象に残っています。
とっても素敵な作品です。
本が好きな方、本屋さんが好きな方には、本当に観て欲しい。
全国の映画館を順番に回っていくようで、新宿での上映は10月25日(金)までなので、東京近郊の方はすぐにでも!
新宿のK's cinemaも、待合場所には色んな作品のチラシが素敵に飾られていて、椅子はフカフカ、すごく綺麗なミニシアターでした。
もちろん、多くの方に観てもらいたいから、大きなシネコンで上映されることが良いとは思うんだけれど、何となく、人を感じられるミニシアターで観れるのが、この作品に合ってるなーなんて思いました。
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