教員の働き方改革が求められている理由③
こんにちは,HARuです。というわけで,第3回,教員の働き方改革が求められている理由についてお話しします。
過去の記事はこちら↓
労働時間が長いことによる問題
昨日の記事で,教員の労働時間が長くなっていることをお伝えしました。では,労働時間が長いことによる問題はなんなのかについてお話ししていきます。
私が考える問題は以下の3つです。
①授業の準備ができない。
②教員の人としての魅力アップのために研鑽(けんさん)を積む時間が無い。
③優秀な人材が入ってこない。
1つずつ解説します。
①授業の準備ができない。
本来教員の仕事は「授業・学習指導、学級担任等の学級経営、生徒指導 等」と文科省から示されています。さらに,文科省では,授業準備,学習評価や成績処理,学校行事等の準備・運営、地域行事等への参画等,進路指導, 支援が必要な児童生徒・家庭への対応も教員の仕事としてあげています。(詳細は以下の文部科学省のページ↓に記載があります。)
つまり,授業をすることは本来の教員の業務であるということです。当然,そのための準備も。
しかし,現状の勤務状況では勤務時間内に授業準備にたどり着ける教員は稀でしょう。当然,経験年数が多くなればなるほど,授業のストックもレパートリーも増えてくるので授業準備時間は短縮されます。ただ,若手といわれる先生方の負担は計り知れないほど大きいのです。教員はシステム上,若手だろうとベテランだろうと同列に「担任」という業務を担います。ですが,若手のうちから学級経営が上手に出来る人は少ないのです。小学校では学級経営が直に授業に影響を及ぼします。さらに,現状の担任制度は一人の担任が学級に対して全責任を負う形(もちろん他の教員もサポートはしますが,子供や保護者の方の意識は,まずは「担任」にというところでしょう)になっています。授業の準備もろくにできず,にも関わらず「担任業務」も降りかかってくる。多くの会社で新入社員研修が実施されているのに比べてなんと放任主義なことでしょう。実際の現場の状況としては,学校にいる際は学校でしか出来ないこと(ネットワーク等の関係や個人情報保護の観点から外部に持ち出せない情報もたくさんあります)を行い,帰宅後に授業準備をおこなっている先生がほとんどなのではないでしょうか。実際,私も学校では授業準備を行ってはいません。ただ,本来の業務である授業を勤務時間外に準備する。こんな現状では多くの優秀な人材は教育界を志してはくれないでしょう。だからこそ,「働き方改革」が求められているのです。
②教員の人としての魅力アップのために研鑽(けんさん)を積む時間が無い。
上記のように,授業準備は勤務時間外にするしかない状況です。この状況でアフターファイブなどというものはありません。中学校では放課後20時過ぎまで学校に残っている先生がかなり多くいます。ご自身の事務作業や自宅では出来ない作業,授業準備(パウチや厚紙など実際に必要な物品は学校にしか無いため)等をしていらっしゃるのです。この状況で帰宅し,さらなる自己研鑽が積めるでしょうか?正直なところ出来ません。帰宅後,食事,お風呂,睡眠。そして翌日の勤務。平日は多くの先生方がこのようなサイクルで過ごしていらっしゃいます。先生方の中にはご家庭をお持ちの先生もいらっしゃいます。早めに帰宅され,お子さんを寝かしつけられたあとに翌日の準備をする方も多いようです。もちろん,これは企業の方でも同じだと思います。ただ,教員は帰宅時間が遅いこと(勤務時間外)や個人の抱えている業務量はかなり多いことは間違いないでしょう。中学校は土日も部活動があります。文科省,スポーツ庁のご指導により土日のどちらかは休養日と設定することとなっていますが,大きな大会の直前や大会当日などにより土日,両日潰れることも少なくありません。
帰宅後の時間がない,土日も休めない。この状況でどのように自己研鑽を積めばいいというのでしょうか。教員は法律により絶えず研究と修養(研修)に努めなければならないとされています。(詳細は以下↓のページ。)
もちろん,このような中でも自主研修に励まれている先生方もいらっしゃいます。ですが,ワークライフバランスが叫ばれている昨今,ライフを削ってワークをすることが果たして本当に良いことなのでしょうか。教員ももっと学びたいと思っている人は多くいます。授業のこと,学級経営のこと,そしてこれからの社会に生きる子供たちに必要な知識を。ただ,その時間を捻出することがとても難しい。そんな現状なのです。
③優秀な人材が入ってこない。
そして,最後の課題です。この現状を聞いて,あなたは教職に就きたいと思っていただけましたか?残念ながら,費用対効果において教職は魅力的な職業では無いと思います。もちろん,他の公務員の方よりもお給料をいただいていることは自覚しています。それでも,定時に退勤出来る仕事や公務員を超える給料の出る企業に魅力を感じる人が多いのではないでしょうか。もちろん,「やりがい」はあります。しかし,「やりがい搾取」の場になっていることも残念ながら事実なのです。「子供達のため」であれば先生方は無理もします。家庭を省みず自分の担任している子供達を大切にします。でも,果たしてそれが職業として適切なことなのでしょうか。このような現状では,優秀な人材は流出してしまうでしょう。子供たちは日本の未来の担い手です。その子達に接する教員の現状が長時間労働がはびこり,常に疲弊した状態でいることにどんなメリットがあるというのでしょう。
長々と書かせていただきありがとうございました。教員の働き方改革が求めら得ている理由,そして,働き方改革を進めていかなければいけないと思っています。それは,時間を短縮することではなく本当の意味での業務削減や見直しを通して実施しなければ意味がありません。みなさんのお子様を預かる身として,このような現状であることは大変心苦しく,改善したいと心から思っています。教員に余裕がなければ子供たちの様子を敏感に察することは難しいのです。それは多くの方にとっても共感していただける事実では無いでしょうか。
まとめ
記事をお読みいただきご不快なお気持ちにさせてしまった方がいらっしゃったら申し訳ありません。ですが,この記事は不満を書き記したい訳ではないのです。現状を知っていただき,多くの方の力をお借りしながら,子供たちのより良い未来のために「学校教育」を改善していきたいと思っています。